化石だらけの銀座線にはどんな化石があるのか【銀座線探偵団】

銀座線三越前駅と銀座駅には化石がたくさん埋まっている。しかも、地面じゃなくて、壁に。いったいどういうことでしょうか? ライターの西村まさゆきさんが、駅構内を、石材に詳しい専門家とともに化石を探してあるき回りました。

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西村まさゆき

書いたひと:西村まさゆき
ライター。鳥取県倉吉市出身、東京都中央区在住。めずらしいのりものに乗ったり、地図で見た気になる場所に行ったり、辞書を集めたりしています。著作『ファミマ入店音の正式なタイトルは大盛況に決まりました』(笠倉出版社)ほか。移動好き。好物は海藻。Twitter: @tokyo26

西本 昌司

専門家のひと:西本昌司
名古屋市科学館主任学芸員。広島県三原市出身。博士(理学)。崖の岩を見ては地下の歴史を探り、ビルの石材や城の石垣を見ては街の歴史を想像しています。好みの石は花崗岩。実は乗り鉄。著書に「街の中で見つかる『すごい石』」など。Twitter:@nagoya_granite

建物に使われる石材。そのなかに、アンモナイトや貝、サンゴなどの化石が入っている。というのはご存知だろうか? 街で見られるので、「街化石」なんて呼ばれてもいるらしい。かくいうぼくは、普段より化石の大きさを測るためのメジャーを持ち歩き、街化石がどの建物にあるのかをチェックするのが密かな楽しみなのだ。

かねてより、銀座線の駅にも「街化石」がたくさんあるという噂は聞いている。ただ、専門家ではないので、どんな化石がどんなふうにあるのかはあまり詳しくない。

そこで、今回は、街のなかにある石に詳しい方にご協力いただき、銀座線の化石と石について見て回ることにした。

化石天国・銀座線

銀座線、三越前駅にやってきた。一緒に回っていただくのは、名古屋市科学館主任学芸員の西本昌司さん。

まずは三越前駅で

まずは三越前駅で

西本さんは、石材に詳しく、特に、街のなかにある石材や化石についての著書もある。銀座線の化石調査にはうってつけだ。

さっそく、化石を探してみたい。

あった!

あった!

──ベレムナイトとアンモナイトぐらいはパッと見てわかるんです。

ベレムナイト

ベレムナイト

──ベレムナイトは、ライフルの弾丸みたいな形してますが、もともとどんな形してたんでしょう?

西本さん「ベレムナイトは、イカの仲間ですね、今で言うと、コウイカの甲の部分だけが残って化石になったようなものですね」

──体の肉や筋肉の部分というのはもう無くなっちゃったと、そういうわけですね。

西本さん「そうです、ベレムナイトは、縦にスライスされていればよくわかりますけれど、例えば橫に輪切りになってると、なんだこれってなりますね」

ただの黒丸にしかみえない

ただの黒丸にしかみえない

──これは、数学的な空間認知能力が必要になりますね。

西本さん「アンモナイトも、こうやって、横にスライスされて、渦巻きがわかるものはまだいいんです」

アンモナイト

アンモナイト

──いかにもアンモナイトってわかりますから、テンションあがりますね。

西本さん「でも、全部のアンモナイトがこうきれいにわかりやすく切れてるわけじゃないんです。例えば、縦に切れてる場合は、大きい輪っかと小さい輪っかが並んでるような形になるので、他の模様とまぎれてしまってわけがわからないかもしれませんね」

アンモナイト切れ方

──あ、すごい、このベレムナイト見てください。輪切りと横から切った形がわかりますよ。

ベレムナイト

ベレムナイト

西本さん「すごいですね、これはよくわかる」

壁の継ぎ目の部分の段差になっている切れ込みに、うまい具合にベレムナイトが入っている場所があった。

西本さん「これは、アンモナイトがそうなってますね」

アンモナイト

アンモナイト

──沖縄の海岸とかでサンゴの石なんか拾ってよく観察したことがあれば、なんとなくサンゴかな? というのはわかりますけれど、みたことないとなんなのかわからないですね。このフニャフニャしたひもっぽいのはなんでしょう?

ひもっぽい

ひもっぽい

V字のやつも

V字のやつも

西本さん「これは、海綿でしょうね」

──海綿ってあのスポンジみたいなやつですか?

西本さん「そうです、根っこというか、植物じゃないのに根っこというと変なんですが、イメージとしては海底の岩をつかむための部分ですね、それが残ってる」

──ホヤみたいな感じで岩に繋がっているんですかね?

西本さん「そうですね、ホヤのような感じといえばいいかな?」

──ずいぶんいろんな形があるんですね。

西本さん「やわらかいから、押しつぶされていろんな形になるんですよ」

──模様をながめて、なんの化石か想像するのもちょっと楽しいですね。ところで、このアンモナイト、なかに透明な石が入ってるんですけど、これはなんですか?

一部が透明になっているアンモナイトの化石

一部が透明になっているアンモナイトの化石

西本さん「これはですね、地下に埋もれたあとで一部が割れたのだと思うんですが、すき間ができちゃうと、そこから地下水が入り込んで、方解石の結晶が沈殿するんです」(方解石は、石灰岩を構成する炭酸カルシウムを主成分とする鉱物)

──へー、おもしろいですね。

それにしても、だ。

あった!

あった!

あった!

あった!

ちょっと見ただけで次々と見つかる化石。三越前駅は本当に化石だらけだ。

──西本さん! めちゃめちゃ化石ありますね!

西本さん「多いですね、この石は『ジュライエロー』というドイツ産の大理石で、ここ10数年くらいで急にいろんな所で使われるようになったんです」

──ちょっと多すぎじゃないですか、化石?

西本さん「たしかにこれだけあると、ありがたみがなくなっちゃうくらいですね(笑)。最近、ほんとうにこの石はよく使われていて、丸ビルでもよく見かけますよ」

──これ、何年ぐらい前の化石なんでしょうか?

西本さん「そうですね、だいたい1億5千万年前のものです」

1億5千万年......0をつけて書くと、150000000年である。キリスト誕生から現在まで約2000年と考えて、その時間を7万5000回くり返してやっと1億5千万である。

その頃に生きて動いていたベレムナイトやアンモナイトが、いまこうやって石となって日本の地下鉄の壁となっている。

こんなところにウミユリが!

三越前駅ですでにかなりの量のアンモナイトやベレムナイトを発見した。
しかし、銀座線の化石はこれだけではない。銀座駅にもかなりの化石があるのだ。ということで銀座駅に移動してきた。

銀座駅で西本さんがまず注目したのは、階段の横にある赤い大理石だ。

ランゲドッグ

ルージュ・ドゥ・ヌーヴィル・ドゥミフォンス

西本さん「ちょっとこれはすごいですよ、おそらく、ルージュ・ドゥ・ヌーヴィル・ドゥミフォンスという石材の仲間だと思いますが、ベルギー産の高級石材です」

──高級なんですか?

西本さん「高級です。こんなに使われているところはもうそんなにないんじゃないかな? ほとんど取り壊されちゃって、もうほとんど見ることがなくなりました。お、ここにも化石が入っていますね」

化石

──おぉ、本当だ!

西本さん「これはウミユリかなぁ。自信ないけど、丸いのがいくつかあるから、ウミユリの茎の部分を斜めにカットしているのかも」

化石

西本さん「これなんか、こういう穴のあいたサンゴ、沖縄の海に落ちてる感じしませんか?」

──あぁ、落ちてますね。

ここで、西本さんが、足元の石に注目しはじめた。

西本さん「あ、これ、蛇紋岩......いや、蛇紋岩じゃない。ウミユリだらけだ」

ウミユリだらけだ

ウミユリだらけだ

──化石ですか?

西本さん「ウミユリだらけです、これ」

ウミユリだらけ

ウミユリだらけ

西本さん「このバネみたいな四角い模様、ウミユリの細長い部分、茎みたいに見える部分なんです」

ウミユリ

──これがですか?

西本さん「ちょうどここに見える五円玉みたいな形の模様ありますよね。これがいくつにも重なって茎のようになってるんです」

ウミユリ

──あー、この五円玉みたいなのが重なって。なるほど。

ウミユリは、ユリと名前についているけれど、ウニやヒトデと同じ仲間の動物で、植物ではない。現在でも生きてはいるけれど、海底に生息しているため、あまり見かけることはない。

銀座駅は厚歯二枚貝天国

銀座駅の柱には、ものすごい量の「厚歯二枚貝」がある。ちょうど、銀座四丁目交差点の真下にあるコンコースにある柱がそれだ。

「厚歯二枚貝」だらけ!

「厚歯二枚貝」だらけ!

普段これほど人の目に触れるように存在している柱が、じつは厚歯二枚貝の化石だらけだとはだれが想像するだろうか?

この丸い模様が厚歯二枚貝

この丸い模様が厚歯二枚貝

わかりやすいものだけでこんなにあるのだ

わかりやすいものだけでこんなにあるのだ

厚歯二枚貝とは、いまはもう絶滅してしまった貝のひとつで、今のサザエのように蓋を持っているけれど、螺旋状になってない形の殻をもった貝のことだ。

銀座駅の化石はちょうど、とんがりコーンに蓋がついているような形の厚歯二枚貝を横から輪切りにした形の化石が、柱に使われている。

西本さん「これはほぼ同じ向きを向いてますから、おそらく厚歯二枚貝の礁だったんでしょうね」

──礁というのは、サンゴ礁の礁ですか?

西本さん「そうです、サンゴ以外でも群生して礁をつくるんです、この石材自体はポルトガル産のリオシュという石だと思います」

ここで、西本さんがあることに気づいた。

西本さん「この柱、よく見てください。左右対称になってませんか」

よく見ると、模様が左右対称だ

よく見ると、模様が左右対称だ

──いわれてみれば、たしかに。同じような位置に、同じような模様が左右対称みえますね! すごい。

西本さん「おそらく、当時の職人さんが、模様が左右対称になるようわざとこの位置に配置したんだと私は思いますね。ほんとの職人のこだわりですよ」

つまり、切り出し時に隣り合っていた石材を、きちんとアジの開きのように左右対称になるよう、並べて柱にしたとしか思えないのだ。

銀座駅開業当時の職人のこだわりが垣間見えたような気がした。

銀座線は化石線といっても過言ではないのではないか

銀座駅では、ウミユリ、サンゴ、厚歯二枚貝などの化石が見つかった。

普段何気なく通過してしまう地下鉄の駅だが、こうやって柱や壁をあらためて観察してみると、かなりの確率で化石が含まれていることがわかる。数億年前には確実に生きて動いていた生き物たちである。

これらの生き物たちと、我々が生きている今の間に横たわる膨大な時間を思うと、なんとも茫洋としたきもちになってくる。

銀座駅も、三越前駅も、今後リニューアルされるそうなので、工事の関係で見られなくなってしまう化石もあるかもしれない。ぜひ、みなさんも、いまのうちに銀座線の化石をみて、茫洋としたきもちになってほしい。


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