銀座線が90年前にタイムスリップ!?開通90周年イベントレポート

2017年12月30日、日本の地下鉄は90周年を迎えました。90年、それは日本人の平均寿命をも超える年月。多くの方にとっては、想像をはるかに超えた「長い時間」に違いありません。

そんな長い時間を一気にさかのぼる夢のイベントが、2017年12月17日に行われました。

その名も、地下鉄開通90周年感謝祭「TOKYO METRO 90 Days FES!」スペシャル企画、『銀座線タイムスリップ』! およそ4000人の応募者の中から選ばれた幸運な90人の皆さんが、銀座線に在籍する1000系車両40編成中、わずか2編成しかない「銀座線1000系特別仕様車」に揺られて時空を超える旅を体験したのです。

参加が叶わなかった方々のためにも、今回は記事上で、このタイムスリップの模様をお楽しみいただくことにしましょう。

望月崇史(もちづきたかふみ)

書いたひと:望月崇史(もちづきたかふみ)
1975年静岡県生まれ。放送作家。 ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは足かけ15年、およそ4500個! 放送の合間に、ひたすら好きな鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 ラジオの鉄道特番出演、新聞・雑誌の駅弁特集でも紹介。 現在、ニッポン放送のウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載中。

タイムスリップのはじまりは「上野検車区」から!

12月17日、日曜日。

銀座線の車両の車庫として知られる東京メトロ上野検車区に、ぞくぞくと人が集まってきました。この人たちを吸い込んでいく黄色い車両は、銀座線1000系の特別仕様車。銀座線1000系車両のうち、わずか20分の1の確率でしか出会えない貴重な車両です。参加者の皆さんは、その貴重な車両の前面にある非常扉から乗車するというレアな体験を通して、車内へと足を踏み入れていきます。

日本で最初の地下鉄車両、東京地下鐡道1000形車両をとことんオマージュしてつくられた銀座線1000系特別仕様車。

木目調の内装、緑色のシート、真鍮の風合いを手作業で施した手すり、さらにはリコ式をモチーフにした独特の形状の吊り手が、ひと際、レトロ感を引き立てます。

なかでも今回、特に目を引いたのが・・・

ドア横や連結面の壁に埋め込まれた液晶モニター!

イベント中は、地下鉄90周年にまつわる映像などを随時放映。通常の営業でも使われる車両に、こんなモニターが装備されているなんてビックリですよね!

そして何より、タイムスリップした気分にさせてくれたのが、乗務員さんたちの「復刻制服」! 90年前の東京地下鐡道開通当時の制服に身を包んだ乗務員の皆さんや、和装アテンダントの皆さんが、イベントに参加された皆さんのおもてなしを担当していました。

銀座線1000系特別仕様車ならではのやわらかい灯りに、レトロな制服がよく似合います。

地下鉄唯一の「踏切」を通り、歓声と共に『銀座線タイムスリップ』特別列車が出発!

抽選で選ばれたおよそ90名の皆さんを乗せた銀座線1000系特別仕様車は、大きな警笛の音と共に「上野検車区」を出発します。

最初の目玉は、なんといっても地下鉄唯一の踏切。

上野検車区から本線に向かう引込線の途中には、公道(一般道路)が横切っているため、このような踏切が設けられています。アナウンスで紹介されると、車内からは「オーッ!」「すごーい!」と歓声が上がりました。普段は絶対に乗ることのできない区間だけに、一気にテンションも上がりますよね。

『銀座線タイムスリップ』特別列車は、上野検車区から上野駅の浅草方面行ホームに到着しました。このホームで進行方向を変えて、6号車を先頭に浅草駅に向かいます。『銀座線タイムスリップ』特別列車は、このイベントのためにつくられたダイヤを使って運行されました。その意味でも、90周年ならではのプレミアムな列車というわけですね。

上野駅の反対側(渋谷方面行き)ホームには、1927年の開通当時の「地下鉄開通記念ポスター」のレプリカが見えました。そんな銀座線の下町エリア(浅草駅~神田駅間)では、この90周年に合わせてリニューアル工事が行われており、上野駅では、この列車の運行に先駆けて、一部を除きリニューアルが完了。

上野駅は、駅そのものを「美術館」に見立てただけあって、ポスターもアート作品のようですね!

さっそく90年前の開通区間へ!

さあ、11時半前、いよいよ列車は銀座線の本線へと入って、まずは浅草駅へ向かいます。まさにこの銀座線・上野駅~浅草駅間が、1927年12月30日、最初に開通した区間。

これに合わせて、「地下鉄の父」と称される早川徳次(はやかわ・のりつぐ)氏の業績も紹介され、90年間の地下鉄の歩みをたどるように、列車は快適に進んでいきます。参加された皆さんも、レールの音を確かめるように、タイムスリップを楽しまれていました。

浅草駅ではホームで折り返し・・・ではなく、なんとその先にある引込線に入線。
これも『銀座線タイムスリップ』特別列車ならではのルートとなります。そして折り返しの時間を使って、90年前の復刻制服を着用した運転士さんと車掌さんが、車内を通り抜けて移動。さっきまで最後尾だった車両が、こんどは先頭車両となるので、その運転室へ移動しているのです。

スイッチバックのあるローカル線ではたまに見られますが、東京の真ん中を走る「銀座線」の列車で、これをやってしまうところが、ホントに90周年ならではのプレミアムな光景です。

しかも、車内では「銀座線タイムスリップ」の記念パネルも用意され、復刻制服を着用した乗務員の皆さんと記念撮影も!

この記念すべき列車に乗車することができた皆さんにとっては、きっと忘れられない思い出になったことでしょう。

室内灯が消え、予備灯が点く! 一瞬の暗闇に大興奮!!

さあ、列車はいよいよ、浅草駅から渋谷駅に向かって走りはじめました。この「浅草駅〜渋谷駅間」の走行が、『銀座線タイムスリップ』特別列車におけるメインイベント! 銀座線1000系特別仕様車だけに設けられた予備灯が、本格的に点灯する瞬間がやってまいりました。

あらためておさらいしておきますと、銀座線の電車は「第三軌条(サードレール)方式」と呼ばれる3本目のレールから電気をもらって走る仕組みになっています。

以前は駅やポイントの近くなどで、このサードレールが途切れるたびに室内灯が一時的に消灯し、予備灯だけが点灯するのがごくごく当たり前の風景でした。その後の技術の進歩に伴って、駅やポイントの近くなどでも電車の室内灯は消灯しないようになりましたが、この銀座線1000系特別仕様車では、あえてかつての室内灯消灯、予備灯点灯シーンを最新の技術によって再現しているんです。

お薦め撮影ポイントは、溜池山王駅~赤坂見附駅間。
確かにココなら、銀座線と丸ノ内線の連絡線があるので、ポイントをたっぷり通過しそうですね。
さあ、ポイントに差しかかりますよ!

おーっ、消えた!!!

東京の真ん中を走りながら、ほんの一瞬だけ現れる暗闇に大興奮です。つい30年ほど前までの銀座線では、これが当たり前の風景だったんですよね。暗闇の中で、ポツリポツリと灯る再現された予備灯は、不思議と温かい感じ。この予備灯が灯る雰囲気に懐かしさをおぼえる方も多いことでしょう。

しかも、よくご覧いただきたいのは、画像奥の隣の車両は、しっかり室内灯が点いていること。すなわち、銀座線1000系特別仕様車は、ポイント付近でいっせいに室内灯が消灯するのではなく1両ずつ順番に消えて、予備灯が点灯していく仕組みを持っているのです!

実は1両ずつ室内灯が消え、予備灯が灯る仕組みは、車両をつくる皆さんが苦心してつくりあげたコンピューター制御によって再現されたものです。この懐かしさが、最新の技術力によって演出されているかと思うと、この車両をつくりあげた皆さんの「銀座線」への愛を感じずにはいられません!

まさにこの予備灯には、地下鉄開通から90年の歴史がギュッと凝縮されているのです。

幻の駅もライトアップ!

さて、地下鉄開通90周年記念感謝祭「TOKYO METRO 90 Days FES!」の一環として、12月上旬から中旬にかけて、銀座線に残る2つの「幻の駅」のライトアップが行われました。

1つは、末広町駅~神田駅間に、昭和5(1930)年から2年足らずの間だけ存在した「萬世橋駅」。
そしてもう1つが、「神宮前駅」(現・表参道駅)です。

『銀座線タイムスリップ』特別列車も、この2つの駅付近ではできる限りの徐行! 特に「神宮前駅」は、千代田線の乗換案内など、表参道駅となってからもおよそ6年にわたって使われていた痕跡がたっぷり残されている様子が伺えました。

『銀座線タイムスリップ』特別列車は、浅草駅から通常の営業列車とほぼ同じ所要時間で、銀座線全線を走行、街全体のリニューアルが進む渋谷駅に到着。渋谷駅でも引込線へそのまま入線、渋谷マークシティの3階にある車庫で折り返します。

この区間に乗車できるのも、『銀座線タイムスリップ』特別列車だけのプレミアムな体験! きっと渋谷マークシティのなかに、銀座線の車庫があるなんて・・・想像もつかないですよね?

渋谷駅ではおよそ15分の停車時間を利用して、車内の皆さんを対象に、東京メトロ各駅の「発車ベル(メロディ)クイズ」が行われました。

いずれも銀座線各駅からの出題だったこともあり、銀座線大好きな皆さんには簡単だった様子。正解者の皆さんには、東京メトロのオリジナルグッズがプレゼントされました。

銀座線1000系特別仕様車を使用した、地下鉄開通90周年記念感謝祭「TOKYO METRO 90 Days FES!」スペシャル企画、『銀座線タイムスリップ』特別列車は、定刻通り、上野駅に到着しました。

およそ2時間にわたる旅のエンディングには、銀座線・上野駅のJR上野駅方面改札横に新たに設けられた「回転改札」のレプリカが待っていました。

このレプリカ、昭和6(1931)年まで実際に使われていた改札を再現したもので、当時は運賃が10銭均一だったことから、きっぷを買うことなく、直接10銭硬貨を入れて通っていたといいます。

90周年から100周年に向かって・・・出発進行!

上野検車区から浅草駅・渋谷駅を経由して、上野駅までの"銀座線タイムスリップ"旅。

銀座線1000系特別仕様車の予備灯点灯や復刻制服をはじめ、90年前の雰囲気を随所に感じながら、普段は走ることのできない路線を走る車両に乗車することができた満足感でいっぱいの約2時間でした。

90年前、地下鉄が開通した際に生まれた1000形電車は、まだ木製が主流だったなかで、いち早く鋼鉄製でデビューし、ATS(自動列車停止装置)を備えた画期的な車両でした。

この東京地下鐡道1000形をオマージュする形で生まれた銀座線1000系車両はLED前照灯や操舵台車と最新技術を投入する一方で、とりわけ2編成の銀座線1000系特別仕様車は、予備灯など90年前の雰囲気を限りなく再現。
どこか懐かしくて、心がホッとする車両を、最新技術によって叶えました。その意味では、今も銀座線は、90年前と変わらず「時代の最先端」を走る路線なのです。

10年後の100周年、東京の地下鉄は、いったいどのような進化を遂げているのか?
「銀座線タイムスリップ」の旅は、新たなワクワク感を与えてくれる旅となりました。

東京の地下鉄は、まだまだ走り続けます。より安全で、より快適な100周年に向かって、出発進行!!

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