【ひと駅車両対談】外国人にとって理想の銀座線とは?神田「味坊」梁宝璋オーナー×銀座線神田駅区長小川喜治

毎回、銀座線沿線の街で活躍する方々をお招きし、お話を伺う対談企画「ひと駅対談企画」。今回は、神田駅にある中華の名店「味坊」のオーナー梁宝璋さんにご登場いただきました。飲食店と考える沿線の街づくりや、外国人にとっての銀座線など、興味深いトークが展開されました!

梁宝璋

梁宝璋(りょうほうしょう)
中国・黒竜江省生まれ。1995年に来日し、東京・足立区竹ノ塚に中華料理店を開店させたのち、2000年には神田に「味坊」をオープン。以来、自身の故郷である中国東北地方の料理を求め、多くの客が訪れている。2015年末には東京・湯島に姉妹店「味坊鉄鍋荘」を開店させた。趣味は囲碁。

日本橋駅務管区三越前区長

東京メトロ 小川喜治(おがわよしはる)
日本橋駅務管区三越前区長。銀座駅、溜池山王駅、茅場町駅、国会議事堂前駅ほか、数多くの駅勤務を経て現職。管轄地域では75人の部下を束ね、各業務のマネジメントを行う。趣味はジョギング。中華料理は「もちろん大好物です」。

神田味坊

外国人には文字表記よりもイラストで!

小川 梁さんは、1995年に中国から来日されたそうですね。東京にはじめて来た時の第一印象は?

 やっぱり街が綺麗でいろんなことが便利なことね。特に、東京の地下鉄の利便性にはびっくりしました。地下鉄に乗ると、掲示板の表記が漢字なので、なんとなくわかるのもありがたかった。もちろん、間違うことも多いんですが、それがかえって面白くて(笑)。最近では、ちゃんと中国語の表記もあるので、日本に慣れていない中国の人でも安心して使えるようになりました。以前と比べると東京はすごく国際的な街になったと思います。今でも仕事場に行くために銀座線には乗ってますよ。

小川 ありがとうございます。おっしゃるとおり、ここ何年かで銀座線においても外国のお客様から他言語で声をかけられたり、場所を聞かれたりする頻度が非常に増えました。正直、東京メトロは地下空間という、ある意味では特殊なスペースというところもあって、はじめての方だとわかりにくいのかなという部分は、自分自身も感じます。なので、どうやったらわかりやすい案内ができるか、非常に試行錯誤しているところではあります。

 もしかしたら文字表示よりは、視覚的に訴えてくるイラストの方がもっとわかりやすいかもしれません。外国語表記は英語と韓国、中国語が主だと思いますが、それ以外の言葉をしゃべる国も世界にはたくさんありますから。

小川 おっしゃるとおりです。現在、東京メトロでは多言語でパンフレットをつくるなど、少しずつですがいろんな取り組みをはじめているところです。最近ですと、有人改札にタブレット端末を置いて、さまざまな言語で案内ができるようなアプリケーションを活用しています。これなら外国語を話せない駅員でも、最低限の対応が可能になるわけです。対応できる言語はまだ31言語ですが、全駅の改札口に配備しています。

 それはすごく画期的!

小川 ただ、駅員全員が十分に使いこなせるスキルを持っているかというと現状はまだまだですので、今後の課題になるかと思いますね。

 今でも大きな駅の乗り換えだとたまに迷いますが、それでも東京の地下鉄の便利さは世界でもナンバーワンクラスじゃないでしょうか。なにより、きちんと時刻どおりに来るでしょ。中国では、なかなかそうはいかない(笑)。

神田味坊

「神様の田んぼ」は縁起のいい街

小川 ところで、梁さんが「味坊」を16年前にオープンさせるとき、数ある繁華街の中からなぜ神田を選んだのか、興味がありますね。

 神田を選んだのは、当時の不動産仲介業者から「神田にいい物件がある」と紹介を受けたのがきっかけですよ。漢字の字面を見てピンときましたね。神様の田んぼ? これはもう運命なんじゃないか!って(笑)。中国でもほぼ同じような意味なので、縁起のいい街だと直感しましたよ。

小川 味坊さんの繁盛ぶりがそれを証明していますね。そんな梁さんから見て、神田の街は16年前からどう変化したのでしょうか。

 うーん、神田は基本的にあんまり変わってないですね。歴史のある街で、長く続いているお店も結構ありますし。昔から東京のド真ん中で、現代社会がすごく反映されている街という印象でしょうか。もっといえば、やっぱりサラリーマンの街ね。お店をはじめるときに考えたのは、普通の中華料理屋にはない、普段はあまり食べたことのないつまみを用意して、会社帰りに一杯飲んでもらいたいということ。ウチはそんな店にしようと思いました。会社勤めのみなさんは中国への出張も多いから、本場の味が食べられることもお客さんからしたら嬉しかったんだと思いますよ。

小川 確かに、私も神田はそんなに変わらない印象ですね。以前勤務していた赤坂見附駅や明治神宮駅なんかは猫の目のようにころころ建物が風景が変わったりするんです。そこへ行くと、神田は古き良き昭和の面影をまだ残しているというか。

 駅員さんたちだって仕事帰りにちょっと一杯ってことも......。

小川 もちろん、たまには。特定の駅での勤務期間が長いと、周りの飲食店にも自然と詳しくなりますよ。ただ、行く店はだいたい決まってきますよね。駅員はシフト制で働いているのですが、日の高いうちに業務が終わるシフトもあるので、昼から飲めて美味しい店情報というのは、だいたいみんな把握しています(笑)。

神田味坊

地下鉄と飲食店は「親友のような関係」

小川 沿線に繁華街が並ぶ銀座線にとって、飲食店さんとの関わり合い方はますます重要になっていくような気がしています。

 そうですね。東京のような大都市にとって地下鉄は、とても重要な交通手段。われわれ「味坊」も銀座線があるから、「どんなに遅くても、お酒飲んでも、これに乗れさえすれば家へ帰れる」という安心感で、お客さんが集まるんであってね。飲食店が繁盛すると街も活気が出てきて、地下鉄の利用頻度も高くなるのではないでしょうか?。本当に切っても切れない、お互いに助け合うべきものですね。親友のような関係。

小川 私自身も、駅は地域密着でないといけないと思うんです。だから係員というのは、水先案内人の立場もあるのかなと。なにか尋ねられたときにいつでも「ここはこうです」と明確に答えられるような体制をつくっていく必要があります。ただ、タブレット端末に頼るだけじゃなく、尋ねやすい環境をつくらないといけないですね。言葉、心、行動が三位一体となってはじめて水先案内人になれるのかもしれません。

 駅員さんに接したときの印象が良ければ、きっと思いますよ。「また東京に遊びにこよう」とか「あの黄色い地下鉄に乗ってみたい」とか。

小川 はい。とくに、外国人のお客様に対しては、ときには言葉だけじゃなく、身振り手振りで案内ができるとより伝わりやすいのかもしれませんね。実は当社では今、そうした接客面での教育に力を入れていて、専用の研修センターを建設して日々猛特訓を重ねているところです。あくまでも安全第一という点は死守しつつも、時代のニーズに合わせながら、CS(顧客満足度)をもっとアップさせたい。

 2020年には、国立競技場(外苑前駅)を沿線に持つ銀座線の役割はもっと大きくなると思います。そこに関して、私の提案ですが、2020年には銀座線をもうちょっと遅くまで走らせる方がいいんじゃないかと思っています。ほかにも、例えば終電が終わっても、ホームに屋台を出したり、あるいはホームで休憩して、朝まで飲んだりできるようにしたり。

小川 駅員ではなかなか思いつかない、実に斬新な発想ですね!

 それも国際都市・東京をアピールするすごくいい機会なんじゃないかって思うんです。万一、ホテルが取れなくても、地下鉄で休憩できるように利用できたりするとすごく楽しい。その街の有名な店の料理も食べられるなら、なおさら面白い。ウチも協力しますよ!

小川 ありがとうございます。ぜひ今後とも一緒になって街を盛り上げていきましょう。今日はおおいにヒントをいただきました。今度はお店に飲みに行きますよ。

神田味坊

取材中、お店に寄ってお料理の味見をさせていただきました。名物の羊の串焼きを食べてひと言、「ビールがほしい!」

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