開通90周年の浅草駅、制約が多くて工事が大変です!【工事の進捗いかがですか?】

2015年10月から行われている銀座線リニューアル工事。すでに各駅で大幅なリニューアル工事がはじまっていますが、いよいよ浅草駅のリニューアルが佳境です。下町の顔・浅草駅は今、どのように生まれ変わろうとしているのか? 真夜中に行われたリニューアル工事の現場に潜入しました!

4月上旬、深夜の浅草駅。

午前0:30に最終電車が到着して、乗客の皆さんが家路につき、行き交う人もまばらになりました。 東京を代表する観光地・浅草が、1日で最も静かになる時間帯です。この時間の浅草駅は、はたしてどんなことになっているのか?浅草駅のリニューアル工事を統括している末吉大輔さんに案内してもらいました。

浅草駅のリニューアルコンセプトの作成もした末吉大輔さん

浅草駅のリニューアルコンセプトは、「祭りの街」。

浅草寺や浅草神社などが駅周辺あり、1年を通して多くの祭りが開催される浅草。そんな浅草駅のリニューアルコンセプトは、「祭りの街」。「べんがら色」をベースに、ダークグレーで引き締めることで、周辺環境に溶け込む色調にしたといいます。出入口付近は、すでに「べんがら色」になってきていますね!

改札口では、神輿がお出迎え。地元の方々が実際に「三社祭」で使っている神輿を展示しています。毎年5月に開催される三社祭では、この神輿がここから運び出され、浅草の街を練り歩くのだそう。ちょうど改札の正面にあるので、列車を降りた人が最初に目にするのがこの神輿。浅草駅で降りれば、一気にお祭り気分になれそうな気がしてきますよね!

作業時間は150分! リニューアル工事は時間との闘い

改札を抜けてホームへ入っていくと......?オーッ! たくさんの作業員が登場。駅構内には工事機材の音が鳴り響き、声を掛け合いながら配線作業が行われています。仕上げ段階に入った今、一晩の作業員数は、およそ80人。

通常ダイヤだと、最終電車が到着した後の0:40頃から駅に入り、作業をはじめられるのが午前1時くらい。ただ、始発電車が運行するため3:30には撤収作業に入り、午前4時には終了させなくてはなりません。実はこの工事、正味150分しか行うことができない、時間との闘い。だからこそ、手際よく同時並行でたくさんの作業を進める必要があるのです。

浅草駅のホームには、工事用の仮囲いが設置されています。気になるその裏側......どうなっているのでしょうか?末吉さん、よかったらチョットだけ見せてもらえますか?

裏側には人間ひとり分の通路が確保され、壁面の装飾や広告は取り外されて、壁がむき出しの状態になっていました。一般の工事現場であれば、もう少し広めの空間が確保され、建築資材などを置くスペースに充てられるそうですが、東京メトロの駅構内工事では、工事スペースはできるだけ抑えているそう。この壁がどんな感じでリニューアルされていくのかというと?

ここにも登場しました、浅草ならではのイメージカラー「べんがら色」。その上には銀座線のラインカラーであるオレンジ色のラインが入って、銀座線らしさを醸し出しています。以前はホーム上の空調設備などはホームにせり出した形になっていましたが、リニューアルによって全て壁に収納。壁には装飾も施されるので、完成したあかつきにはよりスマートな見栄えになりそうです。

90年前のスペースに収納する! リニューアル工事は空間との闘いでもあった

銀座線のリニューアル工事における大きなポイントのひとつは天井です。これまでは、コンクリートの天井に電気などの配線がむき出しの状態で設置されている箇所もありました。リニューアルにより二重天井の内側へ配線などを収めることで、よりスマートな駅になる予定です。

白い部分は、まだ配線が剥き出し状態の天井、手前側の黒い網がかかっている部分が、これから天井を張って配線を隠す部分です。実はこの二重天井づくりが、今回のリニューアルでも有数の難易度の高い工事。それというのも、浅草駅は、今から90年前、昭和2(1927)年の建造物。当時の人の身長が影響しているのかもしれませんが、天井が比較的低くつくられているんです。単純に天井を拡大することもできないので、今あるスペースを活用して、現代に求められる快適なホームの空間を生み出さなくてはなりません。「これほどまでに制約のある現場はない」とは作業員の声。浅草駅のリニューアル工事は、空間との闘いでもあるのです。

ホームのかさ上げや、ホームドアの新設。すべてはお客様の「安全」のため

訪れた日は、渋谷方面2番ホームでホームドアの調整工事が行われていました。銀座線のホームドアは、ドアとドアの間が透明なので、より開放感があります。

一方、渋谷方面1番ホームでは、床の張り替え工事が進んでいます。これまでの床はテカリ具合からも分かりますが、雨が降ると若干スリップしやすい材質でした。しかし、新しい床では滑りにくい材質のものに交換。

また、これまではホームの水はけがしやすいよう、線路に向かってわずかに下り傾斜がありましたが、このリニューアルに合わせて、ホームの端まで水勾配1%は残しつつ、ほぼフラットになるよう、かさ上げ工事も行われています。やはり、鉄道における最も大事なことは、安全にお客様を運ぶこと。ビジュアル面をきれいにするだけでなく、安全性も向上させていきます。

きっぷ売場の整備や、清潔なトイレで利便性の高い駅を目指す!

地下1階の仮囲いの中では、きっぷ売場のリニューアル工事が進行中。

従来のトイレも跡形なく撤去され、ほぼゼロからの工事がはじまろうとしていました。

浅草の街は、およそ2か月おきに大きなイベントがあります。3月の「隅田川の桜」、5月の「三社祭」、7月の「隅田川花火大会」......これらのイベントにおとずれる人に少しでも快適な浅草駅を体感してほしい、そんな思いで日々の工事は進められています。しかし、その思いに立ちはだかるのが、時間と空間の壁です。1日3時間弱の作業時間と、開通90年という長い時間。狭い天井空間と、制約される作業空間。この壁をひとつひとつ乗り越えながら、銀座線浅草駅のリニューアル工事は着実に進行しています。

「べんがら色」が映えるホームがひろがり、「祭りの街」をイメージした駅リニューアル工事が完了するのは、2017年12月ごろの予定です。もしも、工事中の浅草駅を訪れたのなら、人が寝静まったころ、仮囲いの向こうで、「時間と空間」との闘いを必死に繰り広げている100人近い"戦士"たちがいることに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

浅草駅:2017年12月リニューアル完了(一部除く)

※エレベーター新設は2023年度までに行います。

2018年1月25日時点

望月崇史(もちづきたかふみ)

書いたひと:望月崇史(もちづきたかふみ)
1975年静岡県生まれ。放送作家。 ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは足かけ15年、およそ4500個! 放送の合間に、ひたすら好きな鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 ラジオの鉄道特番出演、新聞・雑誌の駅弁特集でも紹介。 現在、ニッポン放送のウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載中。
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