どうして電車が東大に?東大に譲渡された01系車両の姿を追え!【銀座線探偵団】

2017年3月、惜しまれながら銀座線を引退した01系車両。この車両のうち1両が東京大学に譲渡されたことはご存知でしょうか。研究用として千葉県は柏キャンパスにあるこの車両、いったいどんな使われ方をしているのか。いまの姿を取材してきました。

やって来たのは、千葉県柏市の「東京大学 柏キャンパス」。柏キャンパスは、東京大学の21世紀における新たな研究拠点として、20年以上前から時間をかけて整備された本郷、駒場に次ぐ第3の主要キャンパスです。

主に理系の研究施設がまとまっており、大学構内は1つの街のよう。お寿司屋さんや保育園など、大学ではあまり見かけないお店や施設があります。

先ほどの入口から広いキャンパスを10分程歩き、「東京大学生産技術研究所付属千葉実験所」にたどり着きました。

譲渡されていたのは最後に走った01系車両だった!

東京大学生産技術研究所(略称・生研)は、工学を中心とした研究所。国内・外から1000人を超える研究者たちが集い、さまざまな研究を行っています。大学が持つ研究施設の規模としては、日本最大級。

そんななかでも、この千葉実験所は、今年4月に千葉市内から柏キャンパス内に移転してきたばかり。建物もまだピカピカです。

その外を見てみると、なんだか敷地内を車が走っていますね...。信号もある...。よく見るとあの自動車、運転席がありません! 自動運転...!?

と思ったら、足元には線路が! もしかして、ここを01系車両が走るのでしょうか...。

さあ、「研究実験棟Ⅰ」と呼ばれる大きな建物に一歩足を踏み入れます。

さっそくいました、01系車両! 実験棟の高い屋根に大事に守られ、しっかり標準軌(1435mm)のレールに乗っています。

この日は、「東京大学柏キャンパス」で年1回行われる「一般公開」の日。01系車両も、一般公開を記念した特製のヘッドマークでおめかししています。

聞けばこのヘッドマーク、東京大学生産研究所・須田研究室の林(リン)特任助教お手製のものだそう。市販の丸テーブルを白く塗って、ヘッドマークに仕上げたのだとか。

それにしても、この01系車両、上部の車両番号のところにご注目ください。なんと、3月12日の「ラストラン」で走った01系車両のうちの1両なんです。

銀座線01系・01-130車両、2017年3月12日、中野車両基地にて

あの車両が、柏にやって来ていたのです。筆者も、およそ半年ぶりの「再会」に嬉しさがこみ上げてきました。

柏キャンパスにやってきたのは、6号車1両のみ。営業運転中は見ることができなかった5号車との連結面も見学できます。なかなか見ることのできない表情、まるで違う車両のようです。

なかの様子も当時のまま。シートがはがされて無残な姿に...なんてことはなくて、なんだか安心です。

この01系車両は、「研究用車両」として使われると公式に発表されていますが、具体的にはどのように使われていくのでしょうか。今回、01系車両の活用に大きな影響を与えた、鉄道の未来を担うキーマンにお話をうかがうことができました。

お、ちょうど貫通路の窓の前を横切った、あのかたです。

乗り物研究の第一人者に譲られていた!

お話をうかがったのは、東京大学生産技術研究所千葉実験所長にして、次世代モビリティ研究センター長も務める、工学博士の須田義大教授。須田教授は、昭和34(1959)年、東京都生まれで、赤坂見附駅が最寄駅の高校に通われていたこともあり、この01系車両が入る前から毎日銀座線に乗っているヘビーユーザーだったといいます。

この須田研、乗り物そのものの性能向上やその利用環境など、交通システム関連の事柄を広く研究するという研究室。冒頭に見た自動運転車も、須田研の研究対象だったんです。

──そもそも01系車両が「柏キャンパス」にやって来たのはなぜですか?

私の研究室は長年、東京メトロと車両の開発などで共同研究を行っていて、研究の成果が、千代田線や丸ノ内線の車両などにフィードバックされてきました。また、銀座線の新型車両1000系の車両づくりなどを手掛けている東京メトロの方々とも、昔から交友があったんです。

この実験棟、今年3月末に完成したんですが、ちょうど同じタイミングで銀座線01系車両が廃車になると聞きました。そこで「さらなる鉄道技術の発展のために」と譲渡をお願いしたところ、快く受けていただきました。

なかなか見ることのできない車両の下側に侵入!

──須田先生は、こちらでどのような研究をされているんですか?

ハードからソフトまでさまざまな研究を行っています。ハード面では、特に車両の「台車」の研究を行っていて、自己操舵台車というものを開発しました。この台車を履いた車両は、実際に中部地方のカーブの多い路線を高速で走る特急列車として活躍しています。銀座線もカーブが多い路線ですよね。この研究の流れを汲んで、さらに進化させる形でできたのが、銀座線1000系車両の台車なんです。

01系車両の隣には研究に使用する台車が置かれていた

──ソフト面では、どのような研究を?

車両の座席配置なども、研究対象の1つです。どのように座席を配置したら、鉄道を利用する皆さんが、混雑した車両でも乗り降りしやすく、座りやすいかということ。さらには、スマートフォンで列車の位置情報などを提供するアプリの開発もやっています。既に実用化されているものもありますよ。

01系車両は実験線を走る!

──この01系車両、どのように活用していく予定ですか?

研究を行う上で、やはり実際の車両ほど役に立つものはありません。例えば「混雑した車内」というシチュエーションで実験するにしても、営業列車ではできませんが、実車両があれば、ここに人を集めて実験できますこの千葉実験所には、333mの実験線(線路)がありますので、この車両を走らせた実験も考えています。

研究所の屋外には実験線が引かれている

──実験線は、新しい実験所と共にできたものなんですよね?

そうなんです。線路を走らせる実験は、従来、新しく開業する鉄道路線の開業前などに行ってきました。しかし今、日本国内で新規に開業する路線なんて、ほとんどありませんよね。西千葉の実験所には100mほどの実験線がありましたが、それでもできる実験は限られていたんです。その意味でも今回、長年のアプローチの成果が実り、恐らく日本の大学では最も長い実験線ができ、そこを実際の車両を走らせられるというのは大きな意義があると思っています。

そうそう、銀座線には地下鉄なのに上野に踏切がありますよね。実はこの実験線にも2つの踏切があるんです。黄色い遮断器は今のところありませんが、今後はさまざまな実験のために、研究用のものを導入する予定です。

──今後、一般の方がこの01系車両を見られる機会はありますか?

今回(10/27~28)のような「一般公開イベント」のときにはご覧いただけるようにするつもりです。そのほか、同じように鉄道車両の研究を行っている団体の皆さんをはじめ、中学・高校などの社会科見学などで、教育の一環として、公開することは考えています。今回、01系車両を譲っていただいた理由には、次世代を担う中・高生の皆さんへ、早い時期からの高度教育の機会を提供する、その"教材"としての役割も含んでのことなんです。

──これからの鉄道は、どのように変わっていきますか?

やはり快適性が進化していくことが、非常に重要だと思います。具体的には、カーブをスムーズに走る、揺れを少なく、いかに滑らかな運行ができるかということですね。そのためにハード面の研究では、「独立回転車輪※」の研究が進んでいます。

※従来の鉄道車両では、左右の車輪が車軸で繋がった台車が一般的だった。独立回転車輪では、車軸を無くし、左と右の車輪が独立して回転する。既に路面電車の一部などに導入されているケースがある。

ソフト面では、ビッグデータやAI(人工知能)を活用して、「異常検知」に役立てることで、トラブルを事前に把握する...といった研究も行っています。さらには、スマートフォンなどによる情報連携もカギになってくるかと思います。
それらのテーマを、より進化させていきたいと考えています。

(須田教授インタビュー・終わり)

須田教授はホームドア研究の第一人者でもあり、今、銀座線に設置されているホームドアも、実は須田教授の研究を基に開発されたものだそう。青少年時代から銀座線と共に育ってきた、銀座線愛溢れる須田義大教授。そんな須田教授と、教授を慕う研究者の皆さんのもとで東京大学柏キャンパスの01系車両は、より快適な鉄道車両づくりに役立てられていくことでしょう。

東大に居場所を移した01系車両は、これからもずっと鉄道の未来に向かって走り続けるのです!



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