銀座線の駅に使われている石材がけっこうすごかった話【銀座線探偵団】

化石がたくさん埋まっている、銀座線の三越前駅と銀座駅。ライターの西村まさゆきさんが、石の専門家とともに化石を探していたのですが、専門家の西本さん、やたらと石材そのものに感心したご様子で...。

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西村まさゆき

書いたひと:西村まさゆき
ライター。鳥取県倉吉市出身、東京都中央区在住。めずらしいのりものに乗ったり、地図で見た気になる場所に行ったり、辞書を集めたりしています。著作『ファミマ入店音の正式なタイトルは大盛況に決まりました』(笠倉出版社)ほか。移動好き。好物は海藻。 Twitter:https://twitter.com/tokyo26

西本 昌司

専門家のひと:西本昌司
名古屋市科学館主任学芸員。広島県三原市出身。博士(理学)。崖の岩を見ては地下の歴史を探り、ビルの石材や城の石垣を見ては街の歴史を想像しています。好みの石は花崗岩。実は乗り鉄。著書に「街の中で見つかる『すごい石』」など。Twitter:@nagoya_granite

東洋初の地下鉄である銀座線。

最初の上野駅〜浅草駅間は1927年。今から90年以上昔に開通している。東洋初の地下鉄には、いったいどんな石材が使われているのだろうか?

内装が特にゴージャスな三越前駅

先日、地下鉄のなかにある化石を探して、名古屋市科学館主任学芸員の西本さんとともに、三越前駅から銀座駅まで巡ったのだが、西本さん、化石だけでなく、地下鉄のなかに使われている石材に興味を持った様子だった。いや、けっこう気を引かれていた。けっこうすごいらしいのだ。ということで、この記事をまとめることになった。

左が西本さん。右が筆者。西本さんが見ている柱はめちゃめちゃいいものらしい

左が西本さん。右が筆者。西本さんが見ている柱はめちゃめちゃいいものらしい

三越前駅で使われている石材を見てみたい。

まず、壁や柱に使われている化石だらけの石材は「ジュライエロー」というものだ。

ジュライエローは、ここ10数年ほどで急にさまざまな場所で使われはじめた石材で、ドイツ産の大理石だが、アンモナイトやベレムナイトといった化石がふんだんに含まれている。

ジュライエロー

ジュライエロー

ちなみに、このジュライエローというのは、石材の名称だ。ジュライエローを、科学的な言い方をすると、石灰岩。石材としての言い方だと大理石となる。

ジュライエローが使われはじめたのは比較的最近なので、三越前駅でも、コレド室町への出入口など、新しくつくられた場所にしか存在していない。

三越前駅で特筆すべきは、建設当時に使われた石材の数々だ。

特にこの柱に使われている石材。

これがかなり貴重な石

これがかなり貴重な石

西本さん「この石は国会議事堂にも使われた、徳島県産の大理石『淡雪』『曙』『答島』あたりのものだと思います。国産のものはもう手にはいりませんよ...」

これがかなり貴重な石

寄ってみる

日本産の大理石は、海外産の大理石に比べて産出量が多くなく、大量の注文に応えきれず高価になってしまい、あまり使われることはなくなってしまった。

そのため、いまではあまり採掘しておらず、このように昔の日本産の石材がそのまま残っている場所は、非常に貴重なのだという。

イタリア産高級石材

イタリア産高級石材

こちらは、コンコースにある丸い柱。落ち着いた赤色のきれいな柱だ。これはイタリア産の高級石材で「ローザ コラーロ」という石材だ。

円柱と天井のつなぎ目にはオーナメントがついており、特別感がただよう。

銀座駅の石材はどこからきた?

さて、銀座線の豪華な内装の駅は三越前駅だけではない。路線名ともなっている銀座駅も負けないぐらい力が入った内装になっている。

まず、こちらの柱。三越前駅とは違って赤みがかったなかに白いスジが美しい、ベルギー産の「ルージュ・ドゥ・ヌーヴィル・ドゥミフォンス」という大理石。

ランゲドッグ、フランス産高級石材です

ルージュ・ドゥ・ヌーヴィル・ドゥミフォンス、ベルギー産高級石材です

この石も、大手町ビルくらいにしか残ってない石で貴重なものだという。

さらに、地下鉄の父とも言われる早川徳次の銅像がある場所の石材は、なみなみならぬ気合が入っている。

万成石の台座

西本さん「ああ、この台座の石もいいものですね」

銅像の台座は、岡山産の万成石。これは石灰岩ではなく、御影石とよばれる花崗岩でできている。 そして、バックの斜めのスジの入ったきれいな石は、三越にも使われているフランス産の「ヴェール デ ストゥール」で、これも貴重な石材だという。

銅像そのものではなく、台座の石自体が注目されることもそうないのではないか。

石には、はやりすたりがある

以上、見てきたように、銀座線では、日本各地、世界各地から最高級の石材が集められて使われている。これらの、特に日本産の石材に関しては「国会議事堂の建設」が果たした役割と影響がかなり大きいと西本さんはいう。

西本さんによれば、現在の国会議事堂は、建設に使用する石材を全て日本産で賄うため、日本全国で調査が行われ、そして、全国から最高級の石材が集められて建設に使用されたのだそうだ。国会議事堂は、1919年にデザインが決定し、1920年に着工、竣工したのが1936年。実に完成まで17年かかっている。

一方、地下鉄は1927年に一部開通後、銀座までは1934年に完成している。まさに、国会議事堂の建設と、三越前駅の建設は同時期に行われていた。この頃に使われた高級石材は、国会議事堂の建設に伴う調査によって発見されたものも多いのだ。国会議事堂と銀座線、同じ場所で採掘された石材が使われている可能性が大いにある。

これは国会議事堂のイメージ

これは国会議事堂のイメージ

以前は内陸から運んでいた

建材としての石は、当時、北関東などで大量に採掘され、大量消費地であった東京に運ばれ、西洋風の近代建築や都電の敷石などに使用された。茨城県の稲田石などがまさにそれにあたる。国会議事堂や銀座線の駅が建設された頃は、まさに、石材が建材として主役だったそんな時代につくられたということになる。

しかし近年は、石ではなく地下鉄の壁や柱にガラスを材料にしたパネルが使用されることが多くなった。

石材そのもののはやりすたりだけでなく、建材そのものも、時代とともに移ろっていくということがわかった。銀座線はこれまで、駅の構造などが「土木遺産」、昔の車両が「重要文化財」に指定されているけれど、石材からみても、銀座線そのものが貴重な文化遺産であるということの証拠であるといえそうだ。

歴史がたっぷり詰まっていた

ふだん沢山の人が行き交う、銀座線の三越前駅や銀座駅。化石だけでなく、その石材自体も、国会議事堂など歴史的名建築に使われたものと同じ、貴重な石材がふんだんに使われている。

開通90年の銀座線、その歴史はやはりただものではない。


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