元肉屋、元魚屋...素材にこだわった赤坂見附駅の名店とつくったドリーム駅弁【銀座線ドリーム駅弁】

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書いたひと:下関マグロ
山口県出身。東京都台東区在住。東京の街歩き、食べ歩きなどを中心に執筆活動をしているフリーライター。近著には『歩考力』(ナショナル出版)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(立東舎/共著)などがある。

赤坂見附駅のドリーム駅弁をつくるよ!

メトロの駅弁、本来ならありえないけれど、それを架空でつくってしまおうというのがドリーム駅弁プロジェクト。架空とは言っても、きちんとお店に協力してもらってつくるのだから本格的だ。これまで、日本橋新橋浅草京橋神田渋谷といった駅のドリーム駅弁をつくってきたが、今回は赤坂見附駅。個性的なお店に協力してもらい、とびっきりの駅弁をつくっていく。

この曲げわっぱのなかに、赤坂見附駅のおいしいものを詰めこんでいくよ!

老舗「とんかつ 末吉」

まず、最初にうかがったのは一ツ木通りから円通寺通りへ入ったところにある「とんかつ 末吉」さん。創業は1977(昭和52)年という老舗だ。

この場所で創業して40年ほどになる「とんかつ 末吉」

昔ながらの店構えがいいかんじ。のれんがいい味を出している。迎えてくれたのはお店の2代目と3代目。

2代目の末吉義久さん(左)と3代目で息子の隆太郎さん

こちらのお店、赤坂で仕事をしていた時期にランチでよくうかがっていた。ランチ時はいくつかの定食が100円ほど安くなっている。とんかつはもちろん、ご飯や細かく刻まれたキャベツの千切りがおいしいお店だ。

2代目の義久さんにお話をうかがった。

──こちらのお店の創業はいつでしょうか?

「とんかつ屋としては、昭和52年ですね」

──として、とおっしゃると、それ以前は?

「その前はですね。私の父がもともと新橋で肉屋をやっていて、昭和36、7年ごろに一ツ木通りへ移ってきたんです」

──それで、昭和52年にお肉屋さんからとんかつ屋になったわけですね。

「そうなんです。時代の流れなんでしょうかね。もともと肉にはくわしいので、料理もうまくできたというわけです」

──新橋から赤坂へ来られたというのはどういう理由だったんでしょう?

「うーん、そりゃ、よくわからないけど。先見の明があったんでしょうね。このあたりにお店なんてほとんどなかった時期に移ってきたんですから。これは想像なんですが、当時は地下鉄というと銀座線と丸ノ内線しかなかったんですよ。それがクロスするのが、銀座かここ赤坂見附駅だからじゃないですかね」

なるほど、それでは、お料理をつくっていただきましょう。先代のころから働いていらっしゃる職人さんがお料理をつくってくださるとのこと。

もう少し2代目からお話をうかがう。

──2代目は赤坂生まれの赤坂育ちだそうですね。銀座線の思い出ってなにかありますか?

「厳密には新橋生まれの赤坂育ちなんですが、記憶があるのは赤坂ですね。地下鉄は塾通いで丸ノ内線の利用が多く、たしか四谷まで子ども運賃で10円か15円でした。銀座線は母親と一緒に黄色い電車に乗ってデパート(屋上の遊園地)へ連れていってもらったという思い出がありますね」」

──子どものころの赤坂の印象はなにかありますか?
「一ツ木通りに縁日が出るんですよ。綿あめ買ったり、金魚すくいしたりするのが楽しかったですね」

揚げ物のいい香りが漂ってきた。もちろん、なんのおかずをもらったかは最後のお楽しみ。

明治20年、鮮魚店からはじまった「赤坂 とゝや魚新」

さて、お次にうかがったのは、「とんかつ 末吉」さんの斜め前にある「赤坂 とゝや魚新」さん。なんと創業は1890(明治23)年という日本料理店。ミシュランの星を獲得していることでも有名だ。

まさに老舗日本料理店という店構えだ。

迎えてくださったのは店長の村松喜久夫さん。

──こちらのお店、1890(明治23)年が創業だそうですが。

「はい、そうです。初代が埼玉県の熊谷から出てきて、この場所で魚屋をはじめたんです。それから、赤坂の花柳界へ仕出しをするようになり、3代目のときに日本料理店になりました」

──日本料理店になったのはいつごろでしょう?

「今から、37年前くらいですかね」

──ということは、1980(昭和55)年ごろでしょうか。昔、赤坂はどんな町だったんでしょうか?

「先代によれば、昭和20年代は一ツ木通り、みすじ通り、田町通りまで料亭がびっしりで、芸者衆もたくさん住んでいたそうです」

待望の、お料理をお願いする。

──ランチはどんなものが人気なんでしょう?

「そうですね、いつもだいたい5種類ほどの焼き魚をお出ししているんですが、人気ですね」

お料理ができたようだ。

村松さんからは、日本料理のこだわりということで、お料理の配置についてアドバイスをいただいた。弁当という限られたスペースだが、なんとかうまく盛り付けよう。

家庭料理の人気店「おふくろの味 ねぎ」

最後にうかがったのはエスプラナード赤坂通り(田町通り)にある家庭料理のお店「おふくろの味 ねぎ」さん。

「おふくろの味 ねぎ」の創業は1970(昭和45)年。赤坂の別の場所で営業していたそうだが、2009年の2月に今の場所に移ってきたという。

迎えてくれたのは、女将の降旗寿真子(ふりはた すまこ)さん。

ちょうど開店準備のお忙しいところうかがい恐縮。それにしてもおいしそうなお惣菜が、カウンターに並んでいる。

降旗さんのそのお顔といい、話し方といい、どこかで見たことがあると思ったら、なんと赤坂の有名店「まめ多」の女将さん!お店も女将さんもテレビや雑誌などメディアにもよく登場していらっしゃる。

「わたくしは、ここの女将と知り合いで、3年ほど前、ここの女将が愛媛に引っ込んでしまうというので、引き継いだわけで、いつもお店にいるわけではないんですけど、月曜日のお昼にはきているんです」

あー、そうそう、お店にこの本が置いてあった。こういったレシピ本も出していらっしゃる、降旗さんだ。

──降旗さんがお店を取り仕切るようになって変わったことはありますか。
「お料理なども、すこしずつ増えています。以前はお酒の種類は少なかったのですが、今は、日本酒を飲みながらお料理を楽しんでいただこうと、いろいろなものを仕入れています」

──こちら、ランチ時は行列ができるお店としても有名なんですが、人気のメニューはどんなものなんでしょう?
「銀だらのみそ漬けでしょうか。普通は西京味噌などを使うのでしょうけれど、こちらのは仙台味噌を使ってまして、けっこう濃いめの味に仕上がっています」

銀だらの味噌漬けは数量限定で、売り切れていることが多いそう。

というわけで、お料理をいただこう。

これで、今回お弁当に入れるおかずはすべてそろった。いったいどんなお弁当に仕上がるだろうか?

赤坂見附駅の駅員さんに食べてもらおう!

ご提供いただいたお料理をわっぱに詰めて、いざ赤坂見附駅へ。できあがったドリーム駅弁を食べていただこう。
食べていただくのはこちらの駅員さん。

左が門井陸(かどい りく)さん、右が杉山正己(すぎやま まさみ)さん。杉山さんは助役、門井さんは駅係員。

門井さんは社会人採用入社で、以前は塾講師などをしていたという。いろんなバックグラウンドの人がいるもんだなあ。

杉山さんは息子さんが2人いらっしゃって、下の息子さんは高校生で野球をやっているのだそうだ。

──本日はドリーム駅弁を食べていただくのですが、お腹のすき具合はいかがでしょう?
おふたり「いやぁ、すいてますよ」

──ところで、おふたりは駅弁、あるいはお弁当への思い出なんでものはありますか?
門井「高校生のときにお弁当を持っていってたんですけど、早弁してましたね(笑)」

杉山「お弁当といえば、野球観戦でいただく、崎陽軒のシウマイ弁当ですよね。カミさんと一緒に球場で観戦しながらいただくのがマイブームです」

おお、かなりの弁当上級者だ。

さあ、それではドリーム駅弁をどうぞ。

なんとも、いいリアクション。

これがおふたりに食べていただく、赤坂見附駅のドリーム駅弁だ。

左側のゾーンが「とんかつ 末吉」さんご提供の海老フライ、牡蠣フライ、ヒレひとくちカツにごはん。揚げ物下にはキャベツの千切りが敷かれている。真ん中のゾーンが「赤坂 とゝや 魚新」さんよりご提供いただいた、ブリの照り焼き、玉子焼き、車海老の旨煮、ご飯。右のゾーンが「おふくろの味 ねぎ」さんからいただいた、かぼちゃの煮物、ひじきの煮物、茄子、ピーマン明太、いんげんの胡麻和え、きんぴらごぼう。

それでは、おふたりそれぞれ気になったものから、ファーストバイトしていただこう。まずは杉山さんから。かぼちゃからいくようだ。

いかがでしょうか?

杉山「味が染みてて、おいしいですね、味が強すぎないのもいい」

門井さんは茄子をピックアップ。

いかがでしょうか?

門井「なんかおいしい。うーん、ちょっと辛さがあっていいですね」

門井さん、食レポはあまりお得意ではない? 杉山さんが「とんかつ末吉」さんのひとくちカツにかぶりついている。

いかがでしょう?

杉山「熱々じゃなくてもサクサクなのがすごいですねぇ。いやぁ、おいしいですけど、ひとくちカツなんて言って、ひとくちではとても食べられない大きさですね(笑)」

門井さん「おふくろの味 ねぎ」のピーマン明太を食べている、いかがです?

門井「いやぁおいしいぃです。ピーマンも明太も味がしっかりしているのですが、味付けは濃すぎることもなくちょうどいいですね」

なかなか食べ進んだところで、おふたりのおいしかったと思ったものを教えてください。

杉山「このブリの照り焼きがおいしいですねぇ。厚みがすごいですね。脂ものってておいしいです」

このブリは、天然のものなので冷めても硬くならないのだそうだ。

門井「僕がいちばん好きだったのは海老フライですね」

門井「この海老フライは海老もおいしいんですけど、それ以上に衣がおいしかったですね。サックサクなんですよ」

海老を見ながらにこにこだ

杉山「あと、この茄子もおいしかったですね」
門井「あ、僕もこの茄子大好きです」

「おふくろの味 ねぎ」さんの茄子は、やさしい味付けで、あとからやってくるピリ辛味が、印象に残る。

おふたりともあっという間に完食。

さてお次は、どの駅のドリーム駅弁だろうか。乞うご期待!

取材協力
「とんかつ 末吉」
住所:東京都港区赤坂4-3-10
電話:03-3583-0396

「赤坂 とゝや魚新」
住所:東京都港区赤坂5-1-34
電話:03-3585-4701

「おふくろの味 ねぎ」
住所:東京都港区赤坂3-7-15 小川ビル1F
電話:03-3584-5345



※取材は2017(平成29)年10月24日に実施

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