お客様を正しく目的地に導く「案内標識」進化の歴史【銀座線デザイン探訪】

駅のホーム、コンコース、出入口...お客様を目的地まで正しく導くため、駅構内のいたるところに配置されている案内標識。東京メトロでは45年前から、お客様がスムーズに駅構内を移動できるよう案内標識を体系的に構築し、その後時代の流れに合わせて少しずつ形を変えてきました。今回はこの案内標識の体系である「サインシステム」の変遷を通じて、その進化の歴史をご紹介します。

駅の路線数の増加に伴い、より分かりやすい案内標識が求められることに

東京メトロにおいて、駅の案内標識が「サインシステム」として体系化されたのは1973年。東京メトロの前身・営団地下鉄時代にまでさかのぼります。1960年代の東京メトロは日比谷線の開通に伴って西銀座駅と銀座駅が統合されるなど、駅の路線数の増加が進んだ時期でした。そのなかで「どこに行けば何線に乗れるのかがわからない」という声が徐々に増えたため、1972年に駅の案内標識で構内をよりわかりやすくご利用いただくための検討が始まりました。

駅構内のいたるところに配置されている案内標識

導入前の当時の案内標識の問題点は大きく分けて2つあり、案内標識の表記(文字の大きさやフォントなど)が駅ごとにバラバラであったこと、そして駅構内の動線に正対するように配置された看板広告が案内標識の位置をわかりにくくしていたことでした。そこで、阪神梅田駅の案内標識などを参考にしながら、案内標識の表記を統一し、動線上に正対するものを案内標識のみとしたサインシステムを考案し、1973年に千代田線大手町駅で試験導入されることになります。

こうした変更により、試験導入された大手町駅では駅構内でお客様から受ける問い合わせの件数が5,000件から3,000件にまで減少。この結果を受け、1974年からは正式にサインシステムが採用され、全駅に展開されていきました。

バリアフリーと多言語対応の需要を受け、2005年にサインシステムの基準を刷新

その後、2004年に東京メトロが発足すると同時期に新たなサインシステム基準が制定され、2005年から順次各駅に展開されていきます。従来のサインシステムとの一番大きな違いは、バリアフリーの視点、そして増加する外国からのお客様に対応するという視点の2つが盛り込まれたことでした。

たとえば各路線のリングマークは、路線名から取ったアルファベット1文字を追加し「路線記号」として表すことで、色覚に障害のあるお客様でもより簡単に路線を判別できるようになりました。

また、駅コンコースに設置されている案内標識の背景色も変わりました。従来は標識の背景色に白色を使用していましたが、これを濃紺色に変更。また、文字を光らせることで標識内の文字、特に英字がより大きく見るようになり、遠目からでも判別がしやすくなりました。さらに、フォントも変更され、「B」と「8」といった判別しにくい文字も区別がつきやすくなりました。

その他、 ホーム階段付近の柱に大型の案内標識を配置して階段をより見つけやすくするなどの変更が行われた結果、現場の駅員やお客様からは「よりわかりやすくなった」という声が増え、駅構内の利便性の向上に貢献しました。

お客様の高齢化と訪日外国人の増加を受けて実施されたサインシステム基準の見直し

2005年のサインシステム基準の見直し以降も、お客様からのご意見や駅員の意見などに基づき小規模な改良が重ねられてきましたが、制定から10年近く経過した2013年にさらなる利便性の向上を目指してサインシステム基準の全体的な見直しが行われました。

目的としては、さらなる少子高齢化の進行や大幅に増加した訪日外国人への対応など、東京メトロを取り巻く社会環境の変化に対応すること。そして、駅構内の施設や駅周辺のランドマークが年々増加していくことに伴って駅ごとに追加されていった案内標識を一度集約し、全駅でよりわかりやすい案内標識を再設計することでした。

駅の周辺施設を案内する標識。駅周辺の建物の環境が変わることで、駅構内の標識の表記も随時更新していく必要がある

利便性に欠ける部分の調査・抽出を行った結果、いくつかの課題が浮き彫りになりました。たとえば、標識内の情報をどこまで詳しく書くべきかという問題。調査の結果、親切に表示しすぎると情報量が増えてしまい、かえって理解しにくいということがわかったため、情報量を充実させつつも、盤面が煩雑にならないようバランスを調整しています。

2方向を案内する標識。親切に表示しすぎるとかえってわかりにくいという問題が生まれる

こうしたプロセスを経て、2014年7月に新しく制定されたサインシステムの試験調査が上野駅で実施されました。お客様や駅員、障がい者の方などへの調査の結果も概ね好評で、新しく制定されたサインシステムが2020年にかけて各駅で更新されていくことが決定しました。

時代の流れに合わせ、東京メトロのサインシステムは日々進化していく

新しく制定されたサインシステムの具体的な変更点は多岐にわたりますが、いずれもより丁寧によりわかりやすくすることを目的にしたものです。たとえば、訪日外国人の方でも駅周辺の施設が理解できるよう、ピクトグラム(絵文字)や、複数の言語付きで表記したり、お手洗いの位置をよりわかりやすくするため、お手洗い位置標を大型化したりといった対応を進めています。

訪日外国人向けの案内強化のため、駅周辺施設の名前を複数言語で表記

視認性向上を図るため、お手洗いの案内標識を大型化

高齢化への対応としては、2005年のサインシステム基準更新の際には案内標識に用いる文字の寸法を46歳基準としていましたが、現在は60歳基準の寸法に引き上げ、大型化を図っています。また、高齢者の方でもエレベーターやエスカレーターの位置を簡単に見つけられるよう、改札口や駅の出口を案内する標識にピクトグラムを設けるといった変更も行われています。

昇降設備をピクトグラムで標記

2020年には東京オリンピックが控えるなか、駅を取り巻く環境も少しずつ変化しています。時代の流れに合わせて少しずつ姿を変えていく駅の案内標識。普段何気なく見かけ、見過ごしてしまいがちですが、今度駅に訪れる際は目を向けてみてはいかがでしょうか。表記されている文字やピクトグラムを観察することで、新たな気づきを得られるかもしれません。

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