イチョウ並木が美しい外苑前駅。ドリーム駅弁は和・中・インドネシアとバラエティ豊かな顔ぶれに【銀座線ドリーム駅弁】

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書いたひと:下関マグロ

山口県出身。東京都台東区在住。東京の街歩き、食べ歩きなどを中心に執筆活動をしているフリーライター。近著には『歩考力』(ナショナル出版)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(立東舎/共著)などがある。

外苑前駅のドリーム駅弁をつくるよ!

明治45年に亡くなった明治天皇を祀ってある明治神宮を「内苑」、その外側にあるエリアを「外苑」と呼ぶ。ランドマーク的なイチョウ並木、スポーツでは多くの人が集まり、多くの会社もある。さまざまな顔を持つ外苑前駅。その周辺のお店からお料理を提供していただいてつくるドリーム駅弁は、とても多彩なものとなった。

この曲げわっぱのなかに、外苑前駅のおいしいものを詰めこんでいくよ!

本場のバリ・インドネシア料理がいただける「ブリ・マデ」

まず最初にうかがったのは、外苑前駅3番出口から歩いて3分。キラー通りにあるビルの2階にある「Bli Made(ブリ・マデ)」さん。

2009年に創業したバリ・インドネシア料理がいただける「ブリ・マデ」

本場のバリ・インドネシア料理がいただけるお店。ランチのラストオーダーは14時までだが、たいていはそれより早く「sold-out(売り切れ)」の看板が出る人気店だ。
筆者もこちらのナシゴレンをいただいたことがあるが、これまで食べたことのない独特のスパイシーさでクセになるおいしさだった。いっしょに皿に盛られているピーナッツ味のサテ(インドネシアの焼き鳥)、つけあわせの野菜、スープなどすべてが絶品。毎日売り切れになるのもよくわかる。

店主のI MADE SUGITA(イ・マデ・スギタ)さんとホールを担当する名川結(ながわ・ゆい)さんが迎えてくれた。

左が店主のマデさん、右がホール担当の名川結さん

店主のマデさんにお話を聞いた。

──店名の「ブリ・マデ」とはどういう意味なんでしょうか?

「ブリというのは、英語で言えばミスターと同じで、マデは私の名前です」

──こちらのお店がオープンしたのはいつでしょう?

「2009年の6月です。私の奥さんは日本人なのですが、子供が5歳になるまでインドネシアのバリ島に住んでいました。日本に来たのは2003年です」

──お店を持つまでは何をされていたのですか?

「いろいろな仕事をしました。飲食店でも働きましたが、いつかは自分の店を持ちたいと思っていました。名川さんとは、以前働いていた飲食店で知り合って、店を出すならこの人に手伝ってもらおうと決めていたんです」

──本格的なバリ・インドネシア料理はどこで習われたのですか?

「お母さんがバリで食堂をやっていて、そこを手伝っていました」

それでは、お料理をしていただきましょうか。

厨房で慣れた手つきで鍋を振るマデさん。

──マデさん、銀座線の思い出ってなにかありますか?

「とにかくびっくりしましたよ。すごいねと思ったね。だって、バリには地下鉄がないんだから。初めて銀座線に乗ったのは12年前。同じ外苑前駅のイチョウ並木のところにあったお店で働いてて、最初に乗ったのはそのころですね」

──こちらのお店には銀座線で通っているんですか?

「はい、そうです。最近は、レトロな車両があるでしょ、あれおもしろいですね。昔はこんな感じだったのかってわかりますから」

店内にはバリのいろいろなグッズが飾られている。

お料理ができたようだ。

いい香りが漂っていますが、まだ中身は内緒

取材中にもひっきりなしに予約の電話がかかってくる。ランチは予約できないが、ディナーは予約ができるそうだ。いただいたお料理をわっぱに詰めて、次のお店へ。

ランチ時は長い行列ができる町中華「福新楼」

次にうかがったのは、外苑前駅の3番出口からすぐの「福新楼」さん。

ランチ時は行列ができる老舗町中華「福新楼」さん

ビルの急な階段を降りるとお店がある。ランチ時はこの階段に行列ができ、地上まで続く。筆者も何度か足を運んでいるが、とにかくどのメニューもハズレがなくおいしい。ランチ時は麺には小ライスがついたり、セットのライスが大盛りにできたりするのもうれしい。

なかでも人気は通称「牛キャベ」と呼ばれている「細切り牛肉とたっぷり生キャベツ」だ。また、セットになっているスープには1個だけあさりが入っているのもいいかんじ。そして、このスープがとてもおいしいのだ。主役もそうだけれど、脇を固めるものがおいしいお店はいいね。

昭和の終わりごろ父からお店を引き継いだ2代目の三橋仁さん

迎えてくれたのは笑顔が素敵な2代目の店主の三橋仁(みつはし・ひとし)さん。ホールを担当し、この店の顔となっている。長い行列ができるランチ時、三橋さんの客さばきの良さで、行列の進みは早い。

シンプルな店内で目を引くのがパンダの絵が描かれた紙ナプキン

──ランチ時にいちばん人気のメニューはなんですか。

「やはり、細切り牛肉とたっぷり生キャベツになりますね」

──「牛キャベ」ですね。これはどうやって生まれたのですか?

「もともとはまかないだったんですよ。で、これおいしいからメニューにしてみようということで、10年ぐらい前から出しています」

──こちらのお店の創業はいつ頃ですか?

「うーん、よくは覚えていないのですが、もともと赤坂に店があって、こちらにもお店を出したんですね。で、赤坂のお店は閉めてこちらだけになって、親父が亡くなり、自分が継いだのが昭和の終わりごろです」

──その頃と今では、外苑前駅周辺は変わりましたか?

「そうですねぇ、ずいぶん変わったと思います。昔はサラリーマンの方が多かったですね。周辺には4、5軒、雀荘があって、よく出前をしていました。今はもう雀荘もありませんし、出前もやっていません」

それではお料理をつくっていただこう。

お料理をしてくださるのは星野文則さん。先代のころから働いている方だ

──銀座線の思い出ってなにかありますか?

「小学生のころに住んでいた赤坂から、銀座線に乗って国立競技場にあったスイミングスクールに通っていましたねぇ。友達といっしょに。今は自宅からお店まで歩ける距離なので銀座線に乗る機会は減りましたが、それは覚えていますね」

──他になにかありますか?

「そうですねぇ...昔の電車は暗かったという印象がありますね。途中で車内灯が消えたのを覚えています」

お料理ができたようだ。

うわぁ、これはおいしそう。いい香りです。

厨房をまかされている星野さんは調理師学校を出てすぐにお店にはいられ、ずっと働いて来られている。星野さんのつくってくれた料理、まだ中身は内緒だ。

創業が昭和14年という老舗蕎麦店「増田屋」

最後にうかがったのは、「増田屋」さんは、外苑前駅3番出口から歩いてすぐの場所にある。
筆者は昭和の終わりから平成にかけてこの界隈に事務所を借りていて、よくこちらの増田屋さんへうかがった。食べていたのは、丼物とおそばのセットが多かった。今回取材をさせていただくので、久しぶりに増田屋さんへうかがった。

2014年にビルを建て替え、新しくなった「増田屋」さん

新しくなった外観にびっくり。2014年にビルを建て替えたそうで、店舗ファサード(正面デザイン)もずいぶん変わった。店内に入れば、レイアウトや雰囲気も一新。驚いたのはメニューだ。当店の新定番として紹介されていた「完熟トマトそば」はカロリーが368kcalで美肌効果があるそうだ。こりゃいただかなくちゃ。オリーブオイル、タバスコとともに出てきた完熟トマトそばは、決して奇をてらっているわけではなく、全く違和感なくおいしくいただけた。もちろん、筆者がかつて食べていたメニューもしっかり残っている。

メニューブックの最初のページには「増田屋のこだわり」が書かれている

メニューの最初のページにはかつての店舗写真が貼られている。筆者が通っていた頃よりも前、創業時の建物だ。

3代目の鈴木章司さんが迎えてくれた

ドリーム駅弁のお料理をいただきにうかがうと、迎えてくれたのは、3代目の鈴木章司さんだ。

──こちらの増田屋さんの創業は1939年(昭和14年)だそうですね。

「そうです。銀座線がこの外苑前まで延長され、駅ができたのが1938年(昭和13年)の暮れだそうです。そして、うちの創業が翌年の2月。たぶん初代である祖父は、ここに駅ができるとわかってお店を出したのだと思います」

──銀座線にはよく乗られていました?

「はい、私もここで生まれ育ったので、学校へ通うのもずっと銀座線でした。そういう意味では、うちのお店も私も銀座線とは深いかかわりがありますね」

──外苑前は変わりましたか?

「ビルの大きさや人の多さは変わったかもしれませんが、変わらないものもあります。それは、銀杏並木などの自然、そしてカルチャーがあり、スポーツがあって、ビジネスがあるというバランスですね、それは昔から今まで変わりないですよ」

──こちらのお客さんの変化はどうですか? 僕が通っていた時期はサラリーマンの方が多かったように思いますが。

「変わりましたね。昔は8割がた男性のお客様でしたが、今はフルタイム通じて女性のお客様が6割です」

それでは、お料理をつくっていただきましょうか?

お料理をしてくださるのは店長の石川力さん

──完熟トマトそばのような新しいメニューはいつからなんですか?

「こちらのビルを建て替えてからですね。いとこが野菜ソムリエをやっていまして、彼と話をするうちに新しいメニューを開発してみようかと思ったのです」

──完熟トマトそば以外にも新しいメニューはありますか?

「グリル野菜と鴨ロース添え、温かいクリーミーカレーせいろでしょうか。豆乳を使った優しいカレーのスープに仕上がっています。美容にもいいメニューで女性に人気ですね」

お料理が出来上がったようだ。

お料理が何品かできあがったようです

いただいた3品はどれもおいしそう。でも中身はまだ内緒。

それではこれをわっぱに詰めて、外苑前駅へ。

さあ、外苑前駅の駅員さんに食べてもらおう!

ご提供いただいたお料理をわっぱに詰めて、やってきたのは外苑前駅。タイプの違う3店舗に提供していただいたお料理はバラエティに富んでいて、とてもおいしそう。

今回お料理を食べていただく駅員さんはこちらのおふたり。

左が樋口知樹さん、右が岡崎秀樹さん。

──おふたりはおいくつで、どんなお仕事していらっしゃいますか?

樋口「24歳です。外苑前駅の改札やホームの監視などをやっています」
岡崎「38歳です。外苑前駅の責任者です」

──外苑前はどんな特徴がありますか?

岡崎「神宮球場がありますので、プロ野球シーズン中は野球観戦をされるお客様をご案内することが多くなる駅ですね。それから、秋はイチョウ並木を見に来られるお客様。学校も多いので、通学のお客様もけっこういらっしゃいます」

──駅弁はお好きですか?

岡崎「駅弁フェアとかあるとついつい買っちゃいます。好きなのは海鮮系の駅弁ですね」
樋口「旅行で新幹線に乗るときはたいてい駅弁を買いますね。よく買うのはシウマイ弁当です。それから、自分も海鮮系が好きです。鮭、イクラの駅弁なんかはいいですよね」

──苦手な物ってなにかありますか?

岡崎「梅干しが苦手です」
樋口「トマトが苦手ですね」

──本日はドリーム駅弁を食べていただくのですが、お腹のすき具合はいかがでしょう?

おふたり「すいてますよ」

それでは、食べていただきましょうか?

おもわず、「おーっ」の声があがる。

これが外苑前駅のドリーム駅弁だ!

左側のゾーンが「増田屋」さんご提供のにしん棒旨煮、だし巻き玉子、出汁トマト。
真ん中のゾーンが、「ブリ・マデ」さんご提供のサテ2本、ナシゴレン
右のゾーンが「福新楼」さんの酢豚、細切り牛肉とたっぷり生キャベツ

それでは、実食!

おふたり「いただきまーす」

樋口「これ、甘くて、おいしいですね」

──それは、「ブリ・マデ」さんのサテですね。

岡崎「サテ、ピーナッツ味がいいですね」

──樋口さん、それ「増田屋」さんの出汁トマトですけど、大丈夫ですか? トマトが苦手では。

樋口「大丈夫です。というか、おいしいですよ」

──それでは、ひと通り食べたところで、おいしかったものを教えてください。

岡崎「僕は増田屋さんのにしん棒旨煮ですね。おいしいです。これ食べたら、増田屋さんのにしんそばを食べに行きたくなりましたよ」

樋口「僕は福新楼さんの細切り牛肉とたっぷり生キャベツ。甘辛い味付けがいいですね」

岡崎「あとはこのナシゴレンですね。これまで食べたナシゴレンはけっこうスパイシーで味が濃かったのですが、これはとても上品な味わいです。子どもでも食べられるなと思いました」

樋口「僕ももう一品、この出汁トマトがとても気に入りました。こんなにおいしいトマトを食べたのは初めてです」

あっという間の完食!

今回は和・中・インドネシアとバラエティに富んだお弁当に仕上がり、駅員さんにも喜んでもらえたようだ。銀座線のドリーム駅弁もいろいろな駅でつくってきたが、どの駅も個性的。さて、次はどこの駅のドリーム駅弁をつくるのだろうか。お楽しみに。

ドリーム駅弁 連載一覧

取材協力:
「ブリ・マデ」
住所:東京都 港区北青山2-12-27 ハレクラニ北青山2F
電話:03-5410-1933

「福新楼」
住所:東京都港区北青山2-7-18 真砂ビルB1F
電話:03-3404-3688

「外苑前 増田屋」
住所:東京都港区北青山2-12-15
電話:03-3403-5521

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