オリンピックを控え開発が進む虎ノ門駅。街の発展を支えてきた名店が集結し、ドリームな駅弁が完成【銀座線ドリーム駅弁】

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書いたひと:下関マグロ

山口県出身。東京都台東区在住。東京の街歩き、食べ歩きなどを中心に執筆活動をしているフリーライター。近著には『歩考力』(ナショナル出版)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(立東舎/共著)などがある。

虎ノ門駅のドリーム駅弁をつくるよ!

虎ノ門という地名はかつてあった江戸城の門の名前に由来する。歴史あるこの町には中央官庁街があり、国内外の企業が数多くオフィスを構えている。この街で働くビジネスパーソンたちの胃袋をつかんでいるお店からお料理を提供していただき、素敵なドリーム駅弁をつくっていくよ!

この曲げわっぱのなかに、虎ノ門駅のおいしいものを詰めこんでいくよ!

虎ノ門のランドマークともいえる洋食の「ケルン」

最初にうかがったのは、虎ノ門駅8番出口からすぐの「ケルン」。虎ノ門の交差点の近く、外堀通り沿いに建つ印象的な店舗ファッサードだ。

虎ノ門を象徴する虎の像と、その目の前にある洋食屋「ケルン」

一階の入り口から階段で地下に降りると、地下一階に広がる客席は広い。120席もあり、ゆったりと食事ができる。

五反田の料亭「松泉閣」から数えて4代目となる小林道生さん

4代目の店主の小林道生さんが迎えてくれた。

──こちらのお店の創業はいつでしょうか?

「前身は1925年(大正14年)に創業した五反田の料亭『松泉閣』です。それが戦災で焼失しまして、その跡地にボーリング場ができたのですが、その中で洋食を出すお店をやっていたんです。その後、父が1960年(昭和35年)に『ケルン』という店をオープンしまして、3年後にこの場所に2号店として店を出したんですね」

──現在、最初のお店は?

「ビルの建て替えで立ち退いたままです。ですから、今はこちらのお店だけなんです」

──店名のケルンというのは?

「先代がスキーの好きな人で、ケルンとは山頂や登山道にあるピラミッド型に石を積んだ道標のことですね」

──3代目から4代目に変わられてお料理など変化はありましたか?
「いえ、そのまま味は継承していますのでほとんど変わっていません。いい材料を使ってまじめにつくっていくということをしっかり守ってやっています」

──4代目になって増えたメニューはありますか?

「煮込みハンバーグですね。それまでは普通のハンバーグしかなかったのですが、煮込みハンバーグを1日15食限定で提供しています」

──ランチの人気メニューはなんでしょう?

「牡蠣フライですね。その年にもよるのですが、10月から2月か3月くらいまでやっています。あとはミックスフライやビーフシチューも人気がありますよ」

それではお料理をしていただきましょうか。

広い厨房で職人さんが手際よくお料理をしてくださっている

──小林さんは子どものころは銀座線には乗られていましたか?

「子どものころから現在まで目黒に住んでいますが、虎ノ門は親が働いていたので、よく来ていました」

──最近はいかがでしょうか?

「最近のほうが銀座線によく乗りますね。とくに溜池山王の駅ができて南北線とつながるようになってからはよく利用しています」

──車両などはいかがですか?

「昔に比べるとずいぶんきれいになりましたね」

小林さんの子どもの頃の虎ノ門界隈のお話を色々聞いている間に、お料理ができたようだ。

いい香りが漂っていますが、まだ中身は内緒

──いやぁ、見た目も素敵ですね。

「はい、このお料理も人気で、お昼は980円でお出ししています」

そりゃお値打ちですね。今度食べにきます。でも、中身はまだ秘密! いただいたお料理をわっぱに詰めて、次のお店へ。

家庭的で落ち着く洋食店「平五郎」

次にうかがったのは、虎ノ門駅1番出口から歩いて4分の「平五郎」。

ランチ時は行列ができる人気洋食店の「平五郎」。

カウンター席が7席、テーブル席が10席のこじんまりとした洋食店だ。
お昼時はピークを過ぎてもひっきりなしにお客さんがやってくる。客層はさまざまで、単独の男女からグループまで。年齢も幅広い。

笑顔が素敵なオーナーシェフの古田竹男さんと奥様の康子さん

迎えてくれたのは店主ご夫婦、古田竹男さんと康子さん。
竹男さんは、西洋料理の草分け的な存在「アラスカ」で25年間ほど働いたあと、虎ノ門で独立したそうだ。

──ユニークな店名ですね。

「ええ、洋食店というとカタカナの名前が多いでしょ、だから漢字の店名にしたんです。実はこれおやじの名前なんですよ」

──お父様も料理人だったんですか?

「いえ、鉄道会社の職員でした(笑)」

──以前は別の場所で営業してらっしゃったんですよね。

「はい、1996年1月から2016年4月末まで20年間ほどこの近くで営業していたのですが、再開発ということで店を閉めたんです」

──こちらのお店はいつから?

「2017年11月からです」

──ランチで人気メニューはなんでしょうか?

「やはり『日替わりランチメニュー』が人気ありますね。もちろん定番メニューの和風ビーフステーキ、ジャーマンステーキ、若鳥のカツレツも出ますよ」

それではお料理をつくっていただこう。

慣れた手つきでお料理をつくり始めた古田さん

──虎ノ門の町は変わりました?

「変わりましたねぇ。以前は喫茶店がたくさんありましたよ、前の店のまわりには7、8軒ありましたが今は1軒もありません。そのほか、小さなお店がどんどんなくなっていきますね」

──お客さんは変わりました?

「昔はサラリーマンの人ばかりでしたが、最近はサラリーマンではない若いお客さんが増えてきましたね」

──銀座線って使われますか?

「ええ、毎日乗っていますよ。浅草の道具街や渋谷などに行きますね。最初にできた地下鉄ですからね、地上に近いところが好きですね」

お料理ができたようだ。

うわぁ、これは間違いなくおいしいやつですね。

──お料理作りのモットーはなんでしょう?

「タルタルソースも自家製ですが、ピクルスから自分でつくるんですよ。ひき肉なども、自分のところで挽かないと気が済まないんです」

なるほど、だからどの料理も味わいが深い。ご提供いただいたお料理はまだ内緒。

開店5分で行列ができるイタリアンの名店「ハングリータイガー」

最後にうかがったのはイタリアンの名店「ハングリータイガー」。ランチ時は行列必至の人気店だ。

創業は1967年という老舗イタリアン「ハングリータイガー」

ランチ時は行列ができる人気店の「ハングリータイガー」。筆者もずいぶん前にうかがったが、他では食べられない唯一無二のスパゲティ料理をいただいた。そして、フロアには名物マダムがお客さんを叱りつけているのを目撃した。

2代目の店主、伊賀元彦さんが笑顔で迎えてくれた

迎えてくれたのは2代目の店主、伊賀元彦さん。

──創業はいつ頃なんでしょうか?

「1967(昭和42)年に父が創業しました。店名は父が寅年生まれで、お店が虎ノ門なので、タイガー。父は大食いだったのでハングリー。それでハングリータイガーになったそうです」

──創業時から今のようなスタイルだったのでしょうか?

「最初はランチでハンバーグとパスタを出していたそうですが、そのうちパスタだけに絞ったそうです。周辺の喫茶店が150円でナポリタンを出していた時代、うちはボンゴレを300円で出していたそうです」

──前は近くですけど別の店舗でしたね。そのときにうかがったことがあります。フロアの女将さんの個性が強烈でしたね。

「それは僕の母ですね(笑) 2018年の6月に亡くなりました。こちらの店舗に移ってきたのが2012年ですが、そのころはもう具合が悪くてお店には立っていませんでした」

──お父様は?

「父は母が亡くなった前の年、2017年に亡くなりました」

──ご両親は亡くなられましたが、こんな素敵なお店を残してくれたのですね。こちらのランチの人気メニューはどんなものですか?

「昔はペスカトーレが一番人気だったんですけれど、ネットの影響でしょうか、画像などがアップされているために最近はダニエルを注文する人が多くなりましたね」

──ハム、ベーコン、卵にニンニクの効いた独特のメニューですが、ダニエルという料理名も他ではないですよね。

「先代のシェフが作ったメニューなんですが、イタリアの家庭料理とかで、料理名はダニエーラという人が好んで食べたからだと聞きました。ただ、ずいぶん昔に聞いた話ですし、その方も亡くなっているのでよくわからないんです」

──昔は男性のお客さんばかりでしたけど、最近は女性のお客さんも増えてきましたね。

「そうですね、こちらに移ってきて女性のお客さんは増えました。女性でも大盛りを平らげる方もいますよ」

それでは、お料理をつくっていただきましょうか。

慣れた手つきで手際よく調理を進める伊賀さん

──銀座線についての思い出ってなにかありますか?

「子どものころ、赤坂に住んでいて、店までよく来ていました。当時は赤坂見附の次の駅が虎ノ門だったんですよね。あと、若いころは銀座線で渋谷によく遊びに行きましたよ」

──昔の車両など、なにか思い出はあります?

「そうですねぇ、とにかく人が多いという印象でしたね。あと、オレンジ色の車体のころは途中で車内の照明が一瞬消えていたのをよく覚えてます。懐かしいなぁ」

──子どもの頃の虎ノ門はどうでした?

「今とはずいぶん違ってましたよ。うちの店の周辺は平家や2階建ての中小のお店がいっぱいありました。まだ下町の雰囲気も残っていて、路地でボール蹴って遊んだりしてましたからね」

お料理ができあがったようだ。

いい香りが漂ってきますね、おいしそうです

いただいた3品はどれもおいしそう。でも中身はまだ内緒。

それではこれをわっぱに詰めて、虎ノ門駅へ。

さあ、虎ノ門駅の駅員さんに食べてもらおう!

ご提供いただいたお料理をわっぱに詰めて、やってきたのは虎ノ門駅。
今回お料理を食べていただく駅員さんはこちらのおふたり。

左が廣田和之(ひろた・かずゆき)さん、右が富樫俊(とがし・しゅん)さん。

──おふたりはおいくつで、どんなお仕事していらっしゃいますか?

廣田「47歳です。銀座駅務管区の助役で、運転に関する教育などをやっています」
富樫「21歳です。虎ノ門駅の駅務係です。改札やホームでお客様の案内などを行っています」

──虎ノ門駅はどんな特徴がありますか?

廣田「平日はサラリーマンの方のご利用が多いですね。また、虎ノ門病院という大きな病院もありますので、シニアの方、車いすのお客様もいらっしゃいます」
富樫「虎ノ門駅は銀座線のなかでは乗降客数が多い駅として位置づけられていますね」

──駅弁はお好きですか?

廣田「そんなには食べませんが、崎陽軒のシウマイ弁当などは好きでよく買いますね」
富樫「実家が秋田県なので、帰省するときなどは東京駅で駅弁を買います。よく買うのはカツサンドです」

──駅弁ではなく、お弁当の思い出ってありますか?

廣田「小学校や中学生などのときにおふくろがつくってくれた弁当ですね。当たり前ですが食べるときは冷たくなっているわけですが、冷めてもおいしいなぁって思いながら食べていましたね」
富樫「自分は、小学校、中学校と給食で高校生のとき母親にお弁当をつくってもらっていました。つくってもらっているときはなにも感じなかったのですが、社会人になって市販の弁当を買って食べたときに、ああ、母親がつくってくれた弁当はおいしかったんだなあとしみじみ思いましたね」

──駅弁やお弁当に入っているとうれしいものってなにかありますか?

廣田「肉が好きなので、から揚げとかが入っているとうれしいですね」
樋口「同じですね。僕もから揚げが好きです」

──本日は虎ノ門駅のドリーム駅弁を食べていただくのですが、お腹のすき具合はいかがでしょう?

おふたり「すいてますよ」

それでは、食べていただきましょうか?

おもわず、「おーっ」の声があがる。

これが虎ノ門駅のドリーム駅弁だ!

左側のゾーンが「平五郎」さんご提供のジャーマンステーキ。
真ん中のゾーンが、「ケルン」さんご提供のカニクリームコロッケ。
右のゾーンが「ハングリータイガー」さんご提供のダニエル。

それでは、実食!

おふたり「いただきます」

最初は野菜から箸をつける富樫さん。

廣田「このスパゲティー、おいしいですね」

おふたりとも「ハングリータイガー」のダニエルに箸がのびる。先ほどつくっていただき、すぐに詰めて持ってきたのでまだ温かい。このお店でしか味わえない独特のメニューはランチ時には1,000円で提供されている。

廣田「うわぁ、これもおいしいですね」
それは、「ケルン」のカニクリームコロッケ。ランチ時はスープ、ライス付きで980円で提供されている。

富樫「たしかにこのカニクリームコロッケ、おいしいですね」」

廣田「このジャーマンステーキですか、こちらもおいしいですね」

「平五郎」のジャーマンステーキは、人気メニュー。ランチタイムはスープ、ライス付きで、1,100円で提供されている。

──それではお好きなものを2つずつ挙げてください。

廣田「どれもおいしかったんですが、僕はまず、こちらのジャーマンステーキが気に入りました」

富樫「僕もこのお肉が好きです」

廣田「このダニエルもおいしいですね」

富樫「このカニクリームコロッケも大好きです」

ぺろりと平らげたおふたり!

今回は洋食をわっぱに詰め込んでみたけれど、駅員さんの評判も上々。虎ノ門という駅周辺のお店を結集させたドリーム駅弁は極上の仕上がりとなった。次はどこの駅のドリーム駅弁をつくるのだろうか。お楽しみに。

取材協力:
「レストラン・ケルン」
住所:東京都港区虎ノ門1-1-28 東洋プロパティ虎ノ門ビルB1F
 ※東京メトロ銀座線虎ノ門駅8番出口徒歩1分
電話:03-3591-4158

「西洋料理 口福処 平五郎」
住所:東京都港区虎ノ門1-11-14 野口ビル1F
 ※東京メトロ銀座線虎ノ門駅1番出口徒歩4分
電話:03-3500-5385

「ハングリータイガー」
住所:東京都港区虎ノ門1-11-12
 ※東京メトロ銀座線虎ノ門駅1番出口徒歩4分
電話:050-5872-8359

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