銀座線でもっとも新しい溜池山王駅は名店ばかり!和・洋・中よりどりみどりで駅弁をつくるよ【銀座線ドリーム駅弁】

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書いたひと:下関マグロ

山口県出身。東京都台東区在住。東京の街歩き、食べ歩きなどを中心に執筆活動をしているフリーライター。近著には『歩考力』(ナショナル出版)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(立東舎/共著)などがある。

溜池山王駅のドリーム駅弁をつくるよ!

溜池山王駅は銀座線のなかでいちばん新しい駅だ。1997年(平成9年)に開業。このあたり一帯はかつて溜池があり、風光明媚(自然の眺めが清らかで美しいさま)な場所だったそう。また、山王は近隣にある山王日枝神社のこと。このエリアには国会議事堂や首相官邸があり、日本の中枢でもある。そんな溜池山王駅周辺のおいしいものをわっぱにつめて、ドリーム駅弁をつくるよ!

この曲げわっぱのなかに、溜池山王駅のおいしいものを詰めこんでいくよ!

「行列ができる理由? うまいからに決まってるじゃない」と親子丼専門店の店主

まず最初にうかがったのは、溜池山王駅の11番出口から歩いてすぐの路地にある「きすけ」さん。

ランチ時は行列必至の「きすけ」。ランチは親子丼のみ

比内地鶏の親子丼がいただけるというので、ランチ時は行列するが、回転は速い。その理由はメニューが親子丼のみであること。客はご飯の量が並か大かを聞かれ、選ぶだけだ。どちらを選んでも一律1,080円(税込)。さらに親子丼はあっという間に提供される。いただいてみると、まず比内地鶏のプリプリした旨みを噛むほどに感じる。割り下には比内地鶏のガラスープが使われ、奥久慈卵2個を半熟でとじる。濃厚だが、後味のすっきりした甘味を感じる親子丼だ。

迎えてくれたのは店主の加藤建次さん。笑顔が素敵だ。

店主の加藤建次さんが笑顔で迎えてくれた。

──加藤さんは、秋田県出身だとうかがったのですが。

「はい、湯沢市出身です」

──東京へ来られたのはいくつの時ですか?

「18歳のとき、集団就職で上京しました」

──集団就職って、そんなお年なんですか?

「いくつに見えます? 私、昭和18年(1943年)生まれですよ」

──いやぁ、お若く見えますね。最初に就職したのはどんな会社だったんですか?

「最初は自動車メーカーに勤めていました。でも、3年で辞めました」

──辞めた理由はなんだったんでしょう?

「東京で家を持ちたかったんですよ。それには勤め人じゃなくて自分で事業をやったほうがいいかなって思ったんです。狛江市にある小さな中華料理店に弟子入りして、3年ほどでのれん分けをしてもらい、下北沢に『博雅』という中華料理屋を出したんです」

──事業はうまくいったのですね。

「ええ、ちょうど高度成長期だったので、忙しかったですよ。それで下北沢に念願の家を建てました」

──こちらのお店はどういう経緯で創業されたのですか?

「2001年に下北沢の店を閉めて、どこか小さな店で女房と2人でゆっくり働きたいなと思って探していたところ、ここの7坪ほどの店舗に出会ったのです。厨房の狭さを見てすぐにこれは親子丼一本でいこうと思いました。オープンは2004年の5月です」

──すぐに行列店になったんですよね。行列ができた理由はなんでしょう?

「そんなの理由は簡単ですよ、うまいからじゃないですか(笑)」

それでは、お料理をつくっていただきましょうか。

厨房には6個口のガスコンロを設置。ランチ時はフル稼働している

──銀座線の思い出ってなにかありますか?

「秋田から集団就職で出てきて、すぐに浅草から銀座線に乗ったのですが、ああ、これが手掘りでつくった地下鉄か、昔の人は偉いななぁってしみじみ思いましたよ」

──最近はいかがでしょうか?

「下北沢の家から出勤しているので、京王井の頭線で渋谷まで行って、渋谷から銀座線に乗ってます。始発だから座れるのがいいですね」

お料理ができたようだ。

やはり中身は親子丼でしょうか。でもまだ中身は内緒

秋田出身の加藤さんは比内地鶏の生産業者と強いパイプがあるため、安くておいしい比内地鶏の親子丼を提供できるのだとか。ちなみに「きすけ」という店名は、加藤さんの実家の屋号の「喜助」からつけたのだそうだ。

なお、2019年6月現在はランチ営業のみ行っているそうだ。

「お客さんの驚く顔が見たい」と老舗洋食店のオーナー

ランチ時はサラリーマンやOLさんたちで賑わう「クーポール 赤坂本店」

次にうかがったのは、溜池山王駅のA8出口から歩いて5分の「クーポール 赤坂本店」。
半世紀近くこの場所で営業をしている老舗洋食店だ。店内は広く、ゆったりとした椅子やテーブルでランチがいただける。しかも、この界隈ではかなりリーズナブルな方だ。そのため多くのサラリーマンやOLさんたちで賑わっている。サービスステーキ(ライス・味噌汁付)、野菜たっぷりのローストビーフ丼 半熟玉子添え(味噌汁付)、とろとろオムライスなどが1,000円(税込)で提供されている。しかも、どの料理もボリューミーで、初めてお店を訪れた人たちはみなさん驚いている。

また、このお店、著名人の方々も贔屓にされていたりして、店内にはその写真やサインなども飾られている。

年齢を聞いてびっくりオーナーの野澤智明さん

迎えてくれたのはオーナーの野澤智明(のざわ・ちあき)さんだ。スーツ姿も素敵な温和な紳士である。

──こちらのお店はもう長いのですか?

「私が35歳のときにここを立ち上げまして、今、81歳ですからまあ、その間営業しているということになりますね」

──えっ、81歳なんですか。お若いですよ、見えませんね。

「いつもお店ではお皿を持って走り回ってますからね(笑)」

──こちらのお店を始められたきっかけはどういうことだったんでしょう?

「19歳のころからコックをやってまして、いつかはお店を持ちたいと考えていたんですが、その原点は戦後すぐの出来事だったんです。当時はまだ珍しかったラーメンを一つ年下の妹が食べに行こうと言うんです。じゃ行こうかと言うと妹が『お兄ちゃん、あっちのお店へ行こうよ、前に行ったらチャーシューがいっぱい入ってたから』と言ったんです。そういうお腹いっぱい食べられそうなお店をつくろうと思ったのが最初ですね」

──今もその精神は同じということなんですね。

「そうなんです。たとえば、とろとろオムライスなんかでもね、初めて注文するOLさんなんかが声をあげて驚くんですよ。それを見るのが好きなんです」

──たしかにこちらのとろとろオムライスを初めて見たときはびっくりする。大きな皿の中心にオムライスがあり、その周辺はお肉たっぷりのハッシュドビーフが広がっているのだ。

「海老フライなんかもね、そのときに手に入る一番大きなものを出すんです。だからお客さん、びっくりしますよ」

それではお料理をつくっていただき、われわれをびっくりさせていただこう。

慣れた手つきでお料理をつくり始めてくれる職人さん

──銀座線ってなにか思い出はありますか?

「銀座線で50年通ってますけど、飽きませんねぇ。改札を出るときはいつもワクワクしますよ。やはり国会議事堂や首相官邸を背にして歩いていると気持ちがいいですね」

──溜池山王駅ができたのは1997年ですが、いかがでした?

「いやぁ、うれしかったですよ。それまでは虎ノ門駅を使ってましたので、便利になりました。やはりね、夢がありますよ、溜池山王駅は。日本の政治の中心にも近いですからね」

──お店で出されているメニューで思い入れのあるものはなんでしょう。

「サービスステーキです。これは一世を風靡しました。新聞、テレビ、雑誌でもずいぶん取り上げてもらったメニューです。ちょうど店を始めて10年くらいのころでしたね。サラリーマンがランチでステーキを食べるというのが珍しい時代で、なんとか食べてもらいたいと考えたのがこのメニューなんです。安くておいしい肉ということで、今ではポピュラーですけれど、ハラミでステーキをつくったんです。これが人気になりました。今はハラミではなく、トモサンカクという部位を使っています」

お料理ができたようだ。

このビジュアルはびっくりですね。わっぱに入るだろうか

いただいたのは、サービスステーキでしょうか。まだ中身は内緒です。

「いい食材に余計な味付けは必要ないんです」と本格中国料理の料理長は言う

最後にうかがったのはザ・キャピトルホテル 東急の2階にある中国料理のお店「星ヶ岡」。

1963年に創業。2010年に「ザ・キャピトルホテル 東急」としてリニューアルオープン。

「星ヶ岡」という店名はかつての地名に由来する。星が美しく見える丘という意味でつけられたこの地に、「星岡茶寮」(ほしがおかさりょう)という高級料亭を営んだのが芸術家で美食家としても有名な北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん)だ。そんな歴史も店名に残している。

店内の大きな窓からは豊かな緑を望め、都心とは思えない落ち着いた雰囲気で食事ができるのもうれしい。

そのお料理は、中国料理の王道を守りつつ、斬新なメニューも多い。平日限定のランチセットでは、フカヒレなどの高級食材も堪能できる。また、土日祝日に実施されているオーダー式バイキングも人気だ。

迎えてくれたのは料理長の小林昇さん

迎えてくれたのは笑顔と低音ボイスが素敵な料理長の小林昇さんだ。

──中国料理の道に進まれたきっかけのようなものはあったんでしょうか?

「5歳年上の兄が中国料理店で働いており、その姿を見て、自分もこの道へ進もうかと思いました」

──中華鍋を振る姿がかっこいいとかそういうことですか?

「ええ、まあそれもありますが、おいしいものが食べられるので(笑)」

──最初はどちらで働かれていたのですか?

「千葉県の高校を出て、最初は横浜の中華街で住み込みで働きました。それから自由が丘や新宿などでも働きました」

──ザ・キャピトルホテル 東急に入社されたのはいつでしょう?

「1986年です。テレビ番組の中華の鉄人としても有名な脇屋友詞(わきや・ゆうじ)さんがこちらで働いていて、いっしょに働かないかと声をかけてくれたことがきっかけです」

──まだ、溜池山王駅ができる前ですね。

「そうです。溜池山王駅のオープン記念のときはホテルからケータリングを提供したことを覚えていますよ。リニューアル前のキャピトル東急ホテルの時代です」

──2010年にリニューアルされて、ザ・キャピトルホテル 東急になったのですね。それでなにか変わったことはありましたか?

「溜池山王駅の6番出口と直結になったので便利になり、お客さまにも足を運んでいただきやすくなりました。雨の日に傘をささずに職場に行けるようになったのも嬉しい変化です」

それでは、お料理をつくっていただきましょうか。

鍋を振る小林さん、いい香りが漂っている

──ランチで人気のメニューはどんなものでしょう?

「平日限定ですが星ヶ岡セットが人気です。メインが6種類から2品選べて、小前菜盛り合わせ、2種の蒸し点心、本日のスープにデザートが付きます。また、ご飯かお粥が選べます」

──お料理をすることで心がけていらっしゃることはありますか?

「やはり、食材にこだわるということでしょうか。生産者のところへ出向いて良い食材を探しています。いい食材だと余計な味付けが必要ないんです。素材のおいしさを引き出せばいいので」

お料理ができあがったようだ。

ああ、これは香りもよく、見た目も美しい! まだ中身は内緒。

2品ほどいただいたが、どちらもおいしそう。でも中身はまだ内緒。

それではこれをわっぱに詰めて、駅員さんに食べてもらおう。

さあ、駅員さんに食べていただくよ!

今回お料理を食べていただく駅員さんはこちらのおふたり。

左が横田栄一(よこた・えいいち)さん、右が岡田静(おかだ・しずか)さん。

──おふたりは東京メトロに入られてどのくらい経ちますか? それからどんなお仕事していらっしゃいますか?

横田「30年になりますね。霞ケ関駅務管区の助役です」
岡田「私は7年になります。同じく霞ケ関駅務管区の駅務係です」

──具体的にはどんなお仕事をしていらっしゃるのでしょうか?

横田「助役は監督職といいますか、駅務係には指示したり、ときには助け合ったりしています」
岡田「改札口にいて、お客様にご案内をしています」

──お仕事をしていて、うれしかったことってどういうことでしょう?

岡田「小さなお子様が手を振ってくれて、それに対して手を振り返したときですね」
横田「小さなお子様は制服を着た駅員さんが好きですから、私なんかもよく手を振られますよ」

──これまで食べた駅弁でお好きなものはありますか?

横田「最近はあまり駅弁を食べないのですが、昔食べた横川駅(群馬県)の釜飯は印象に残っていますね」
岡田「駅弁を買う機会は少ないですけれど、東京駅で売っている各地の駅弁を買うことはあります。海鮮が好きなので、ウニやイクラの駅弁を買ってしまいます」

──どんなおかずが入っていたら盛り上がります?

横田「お肉系ですかね、ステーキなどは好きです」
岡田「私もお肉系でとくに好きなのは唐揚げです」

──本日は溜池山王駅のドリーム駅弁を食べていただくのですが、お腹のすき具合はいかがでしょう?

おふたり「かなりすいてます!」

それでは、食べていただきましょう。

これがおふたりに食べていただく、溜池山王駅のドリーム駅弁だ!

ご提供いただいたお料理をわっぱに詰めてみたけれど、今回は分量が多くて、ふたができなかった

左側のゾーンが「クーポール 赤坂本店」さんご提供の野菜たっぷりのローストビーフ丼 半熟玉子添え+サービスステーキ。
真ん中のゾーンが、「きすけ」さんご提供の親子丼。
右のゾーンが「星ヶ岡」さんご提供のエビとグリーンアスパラガスの塩炒め+アメリカイセエビのチリソース炒め。

それでは、実食!

おふたり「いただきます」

横田さん、ドリーム駅弁を見て思わず「贅沢やなぁ」とつぶやく。

横田さんが箸をのばしたのは、「きすけ」さんの親子丼。即座に「おいしいですね」との感想。

岡田さんはまずお野菜から。「星ヶ岡」さんのエビとグリーンアスパラガスの塩炒め。「このアスパラガス、おいしいですねぇ」と笑顔。

横田さんが「クーポール 赤坂本店」のサービスステーキにかぶりつく。

この笑顔が味を物語っている。

岡田さんも負けじとサービスステーキ。

「クーポール 赤坂本店」さんからは、ポン酢、大根おろし、ゴマダレの3種類をご提供いただいた。まずはポン酢を試す岡田さん。

岡田さんがお肉と格闘。

そして、笑顔。

その後も黙々と料理を食べていくおふたり。

──そろそろ、気に入ったものを2品挙げてもらいましょうか。

おふたり「こちらになります」

横田「僕はローストビーフ」

岡田「私はアメリカイセエビのチリソース炒めですね」

横田「それからこの親子丼は絶品ですね。これも気に入りました」

岡田「あと、私はサービスステーキが好きです」

──タレは3種類ありますが、お気に入りは?

「ゴマダレが好みですね」

かなりのボリュームだったが、時間をかけて完食したおふたり!

今回は和食、洋食、中華という3種類のお料理をわっぱに詰め込んでみた。ドリーム駅弁としては、これまででいちばんバランスがよかったかもしれない。駅員さんにもとても喜んでもらえた。次はどこの駅のドリーム駅弁をつくるのだろうか。お楽しみに。

取材協力:

「きすけ」
住所:東京都港区赤坂2-10-16 赤坂スクエアビル 1F
電話:03-5570-2810

「クーポール 赤坂本店」
住所:東京都港区赤坂1-1-14 野村不動産溜池ビル B1F
電話:03-3582-4035

ザ・キャピトルホテル 東急 中国料理「星ヶ岡」
住所:東京都千代田区永田町2-10-3 ザ・キャピトルホテル 東急 2F
電話:03-3503-0871

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