その時、屋根が動いた!密着・銀座線渋谷駅移設工事【工事の進捗いかがですか?特別企画】

「100年に一度」とも言われている渋谷駅周辺の再開発。銀座線渋谷駅の移設工事もその1つです。銀座線唯一の地上駅である渋谷駅の工事は、いったいどのように行われているのでしょうか? 今回は「スライド工法」と呼ばれる珍しい工法で行われている真夜中の渋谷駅の工事現場に潜入。"駅の屋根が動く"瞬間に、注目してください!

実は80年以上、ほぼ「出来た当時のまま」だった渋谷駅!

実は80年以上、ほぼ「出来た当時のまま」だった渋谷駅!

現在の渋谷駅のホーム

1938(昭和13)年に開業した銀座線渋谷駅は、百貨店の3階にホームが内包される構造で、改修を行うためのハードルが他の駅に比べて高い駅です。80年以上前の開業から現在に至るまで、一度も大きな改修が行われていませんでした。

2017(平成29)年時点で、銀座線渋谷駅をご利用されるお客様は1日およそ22万人。しかし、銀座線渋谷駅は、開業当時のままホームが狭く、トイレやエレベーターも無い状況で、安全面やバリアフリーの課題を抱えています。

実は80年以上、ほぼ「出来た当時のまま」だった渋谷駅!

工事中の新しい渋谷駅のホーム(2019年度に供用開始予定)

そこで、2009 (平成21)年1月から、渋谷駅周辺の再開発事業と連携し、銀座線渋谷駅を「移設」させる工事が始まりました。

実は80年以上、ほぼ「出来た当時のまま」だった渋谷駅!

完成後の銀座線渋谷駅のイメージ図。百貨店の3階にある駅を、表参道寄りにおよそ130m移動させ、さらにホームの幅も約1.7倍(およそ12m)に拡げる予定で、明治通りの上空に位置することになる。

この工事によって、半蔵門線をはじめとした各線との乗換えもスムーズになり、特にJR線とは同じフロアでの乗換えが可能になるなど、大きく利便性が向上すると見込んでいます。

世界一難しい!?渋谷駅の移設を実現する「スライド工法」とは?

今回の渋谷駅移設工事は、渋谷駅の「屋根」の設置に「スライド工法」が用いられました。今回の工事で採用した「スライド工法」は、あらかじめ屋根を組み立てる作業を「作業構台」というスペースで行い、出来上がった屋根を所定の位置までレールを使用して移動させる工法です。

世界一難しい!?渋谷駅の移設を実現する「スライド工法」とは?

具体的な工事のプロセスは以下の通りです。

  1. 新ホームの所定の場所にM型鉄骨を組み立てるための作業構台を設置する
  2. クレーンと作業構台を使用しながら、M型鉄骨を組立てる。同時に、M型鉄骨を移動させるためのスライドレールを敷設する
  3. 組み立てたM型鉄骨を、スライドレールに載せた台車上に設置する
  4. ウィンチを使用し、ワイヤーを巻き取ることで台車上に設置されたM型鉄骨を所定の位置まで引っ張る
  5. M型鉄骨を所定の位置まで移動させたのち、M型鉄骨をホーム桁に接地させ、溶接固定する

1. の「作業構台」は作業員の方が鉄骨を組み立てやすくする役割を担っています。3つに分割されて搬入された鉄骨を作業構台の上で溶接し、「M型」に繋ぎ合わせることでM型鉄骨が完成します。

世界一難しい!?渋谷駅の移設を実現する「スライド工法」とは?

ウインチ。このウインチがワイヤーを巻き取ることで屋根が動く

こちらはホーム両側に2基ずつ設置されたウインチです。これを動力に、事前にセットしたワイヤーを巻き取ることで、スライドレールの上にあるM型鉄骨を滑るように移動させることができます。

渋谷駅の工事で「スライド工法」が採用された理由は、明治通り及びバスロータリー上空であること、近接の再開発の工事との調整などの様々な条件の元、施工方法の検討を重ねた結果、安全性の高いスライド工法が最適であると判断されました。

その時、新しい渋谷駅の屋根が動いた!

その時、新しい渋谷駅の屋根が動いた!

深夜1時過ぎ、表参道寄りから、現在の渋谷駅方面へゆっくりと屋根が動いていきます。スピードは、分速約20センチ。ウインチがワイヤーを巻き上げる力を動力に、分速約20cm移動します。つまり1m移動するのに、およそ5分。この日は7.5m移動していきますので、トータルではおよそ40分間を要する作業です。

その時、新しい渋谷駅の屋根が動いた!

巨大な屋根が滑らかにスライドする理由の1つは、このスライディングパット! このスライディングパットが摩擦を低減させることによりM型屋根がスムーズにスライドします。

その時、新しい渋谷駅の屋根が動いた!

スライド作業は全て指令室で管理され、細心の注意が払われています。作業員の方は、左右のウインチがワイヤーを引っ張る力の数値と、移動速度が常に一定のバランスを保っているかをチェック。万が一、異常があればウインチの巻き取りが自動的に停止するようになっています。

その時、新しい渋谷駅の屋根が動いた!

新しい渋谷駅の屋根は、「M型」の形状が特徴ですが、それにしてもなぜ「M型」なのでしょうか?

当初は一般的なボックス型の屋根を設置する計画でしたが、下から見上げた時に建造物としての圧迫感が強いことが分かり、アーチ型で再設計が行われました。

しかしただのアーチ型では、鉄骨の安定性が損なわれるという懸念がありました。そこで建築家の内藤廣先生が「M型屋根構造」を考案されました。この「M型」になったことで、工事を行う上でも、鉄骨の安定性が大きく高まったといいます。

「M」をシンボルに様々な人力を集めて、新しい銀座線・渋谷駅が生まれる!

「M」をシンボルに様々な人力を集めて、新しい銀座線・渋谷駅が生まれる!

M型屋根の下に広がる、新しい銀座線・渋谷駅のホームの基礎部分。工事が完成した暁には、より安全で快適な駅に生まれ変わります。そして、渋谷駅に乗り入れる各線への乗り換えも一層便利に。

巨大な屋根が「動く」ように、銀座線渋谷駅はダイナミックな変化を続けています。

銀座線渋谷駅 運休のお知らせ【2019年12月28日(土)~2020年1月2日(木)】

「M」をシンボルに様々な人力を集めて、新しい銀座線・渋谷駅が生まれる!

東京メトロでは、銀座線渋谷駅移設に伴う線路切替工事を実施するため、2019年12月28日(土)~2020年1月2日(木)の6日間、銀座線 渋谷~表参道駅間、青山一丁目~溜池山王駅間を終日運休します。

工事期間中、銀座線は表参道~青山一丁目駅間、溜池山王~浅草駅間で折返し運転を実施します。また、東京メトロ、都営地下鉄、JR、各私鉄にて振替輸送を実施します。

銀座線をご利用のお客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。また、今回の線路切替工事終了後の1月3日(金)の始発から、銀座線渋谷駅新ホームの供用を開始する予定です。

望月崇史(もちづきたかふみ)

書いたひと:望月崇史(もちづきたかふみ)
1975年静岡県生まれ。放送作家。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは足かけ15年、およそ4500個! 放送の合間に、ひたすら好きな鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 ラジオの鉄道特番出演、新聞・雑誌の駅弁特集でも紹介。 現在、ニッポン放送のウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載中。
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