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会社情報

トップメッセージ

サステナビリティを経営の中心に据え、事業を通じて
「安心で、持続可能な社会」の実現を目指し、新たな飛躍に挑戦します。

2021年度及び前中期経営計画を振り返って/
新型コロナウイルス感染症の拡大による影響と対応

東京メトログループは、2019年度から2021年度までの中期経営計画「東京メトロプラン2021」の最終年度として、「安心の提供」「持続的な成長の実現」「東京の魅力・活力の共創」の3つのキーワードを柱に、「挑戦」とそれを支える「志」を持って各種施策に取り組んできました。しかしながら、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、引き続き当社の経営環境は厳しい状況が続いております。昨今の日本経済の持ち直しの流れを受け、旅客運輸収入が増加(2020年度比)したことに伴い、営業収益が前年度比3.8%増となったものの、2年連続の赤字計上となりました。今後もテレワークやWeb会議等業務のオンライン化の定着、都心への集中から周辺部への分散・多様化等、人々の意識・行動や、消費行動・企業活動・社会構造等の変化に加え、自然災害の頻発・激甚化、サプライチェーンの途絶等の様々な要因による部品の供給不足、ウクライナ情勢に端を発した資源・エネルギー価格の上昇による電気使用料の高騰等もあいまって、先行きは不透明であると言えます。

このような環境下において、2021年度も2020年度に引き続き、安全の確保を前提に優先順位や仕様、時期等 の見直しによる設備・業務のスリム化など抜本的なコスト構造改革に努め、設備投資金額については前中期経営計画期間内で4,900億円を計画していましたが、実績は3,936億円に圧縮しました。

その中でも設定した計画に基づき、自然災害対策、ホームドアの整備等、お客様の安全や快適なご利用に資する各種取組を実施したほか、半蔵門線18000系をはじめとした新型車両の導入等を実施しました。また、当社の成長に向けて、鉄道事業におけるMaaS等を活用したCity Tourismの促進、関連事業においては、新たな物件の取得や高架下店舗の開業、デジタルサイネージの拡大等に努めたほか、新型コロナウイルス感染症への対策として、お客様に安心してご利用いただけるよう、券売機の消毒や車内窓開け「東京メトロmy!アプリ」による号車ごとのリアルタイム混雑状況の配信を実施しました。

さらに、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都の合意に基づき、当社株式の上場と有楽町線及び南北線の延伸の建設に取り組むという大きな転換点を迎えており、まさに変革のスタートラインに立ったと考えています。

新中期経営計画「東京メトロプラン2024」

こうした状況下で当社は、お客様の安全を第一に、たゆみなき「安全」の追求と、お客様視点に立った質の高い「サービス」の提供により、全てのお客様に「安心」をお届けすることを改めて決意しました。それと同時に、持続可能な鉄道事業の運営と成長戦略による収益拡大を実現すべく、ネクストノーマルを見据えた「構造変革」・「新たな飛躍」を基本方針に掲げた2022年度から2024年度までの新中期経営計画「東京メトロプラン2024」を策定しました。

計画では、(1) 設備状態に応じた保全(CBM)等の新技術の活用や設備・業務のスリム化といった「コスト構造改革による持続可能な事業運営の実現」、(2) City Tourismの促進等によるお出かけ機会の創出と、TIMA(車両情報監視・分析システム)をはじめとしたCBMや「混雑の見える化」等他社と協力し開発した新技術やDXによる「さらなる安全・安心の提供と鉄道事業の進化による東京の多様な魅力と価値の向上」、(3) 不動産開発の強化や駅周辺の都市開発と一体となった魅力的な空間の構築に向けた取組等、「都市・生活創造事業の成長等により東京に集う一人ひとりの活き活きとした毎日に貢献」、(4)「ESGの取組みによる持続可能な社会の実現への貢献」という4つの重点戦略に取り組むこととしました。

また、新線建設(有楽町線延伸(豊洲-住吉間)及び南北線延伸(品川-白金高輪間)については、2022年3月28日付で国土交通大臣より第一種鉄道事業許可を受けました。今後は、十分な公的支援を前提に、2030年代半ばの開業に向けて取り組んでまいります。また、これらの取組を通じて、将来の完全民営化を見据えつつ、当社株式の処分についての財政制度等審議会答申及び東京都の基本的な考え方に基づき、国、東京都及び選定された主幹事証券会社と緊密に連携しながら、上場に向けて取り組んでまいります。

サステナビリティ経営ビジョンについて

社会が急激に変化する現在のような状況下においては、「歴史観」や「世界観」がますます重要になってきていると考えています。「歴史観」においては、産業革命以降人間が追求してきた「豊かさ」がネクストノーマルの世界ではどう変化していくかを捉え直す必要があると思います。また、「世界観」においては、環境問題や人権問題などは、一企業、日本一国だけで解決することは困難であり、国際的な取組が必要になることから、東京に経営基盤を持つ当社も、これまで以上に視野を広く持つ必要があります。

当社はこれまでもこうした歴史観・世界観に基づき、サステナブルであるために企業がどうあるべきかを考え、2020年9月に当社グループのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定するともに、策定した5つのテーマに沿い、様々な取組を行ってきました。

これまではSDGsの視点を中心に事業を通じた社会課題の解決に取り組んできましたが、今後はもう一歩踏み込み、ESGの観点をより強く意識して企業経営を図ることとしました。そして、新たな中期経営計画の始動に合わせ、環境・社会・経済の持続可能性に配慮し、事業を通じ社会課題の解決を図るべく、サステナビリティを経営の中心に据えることとし、2030年に向けた姿勢として「サステナビリティ経営ビジョン」を策定しました。サステナビリティ経営ビジョンの5つのテーマに基づく価値を創造し、すべてのステークホルダーから選ばれる企業グループを目指すとともに、「安心で、持続可能な社会」を目指したいと考えています。

また、サステナビリティ経営ビジョンの策定に合わせ、社会動向等を踏まえ、資源循環や人権の尊重に係る社会課題の重要性を再精査し、マテリアリティの一部見直しを行いました。

テーマ4「地球にやさしいメトロに」では、車体の分解リサイクルや工事等で発生した廃棄物のリサイクル、食品ロス対策等をより一層推進することで、循環型社会の実現へ貢献していくことを掲げました。また、当社は2022年3月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。特定した気候関連リスク及び機会を踏まえ、さらなる省エネ化・再エネ活用にチャレンジするとともに、環境にやさしい交通手段である鉄道のご利用を促進していくことも当社の使命であると考えています。

テーマ5「新たな時代を共に創る力を」では、これまで以上に人権問題に力を入れるべく、「人権の尊重」を新たにマテリアリティとして定めました。社員一人ひとりの人権を尊重し、働きがいを高め、心理的安全性のもと多様な人財が活躍できる組織づくりに取り組みます。また、取引先の人権の尊重にも合わせて取り組んでまいります。

ステークホルダーとの関係強化

サステナビリティを実現し、持続可能な社会に貢献するためには、様々なステークホルダーと良好な関係を保ち、対話を繰り返し、連携していく必要があると考えています。そこで今回、当社グループが関係するステークホルダーと提供する価値についても改めて定義し直しました。今後の株式上場を考えた際に、株主を意識した経営はこれまで以上に必要となってくるでしょうし、新線建設に向けても地域と連携したまちづくりは欠かせません。また、環境におけるScope 3 (※1) の削減や人権課題の解決を考えた際には取引先との連携が強く求められます。取引先は今後当社が成長するために欠かせない「共創」を行う上での重要なパートナーでもあります。

さらに、様々なステークホルダーとの対話は、社員に新たな視点や気づきを与えることとなり、より創造性を高め、新たな創意工夫や挑戦が生まれることにつながります。こういった考えは今後の経営の大きな柱になっていくと思います。そこで、今回のサステナビリティレポートから、ステークホルダーエンゲージメントについても開示することといたしました。

今後、各ステークホルダーとのエンゲージメントをさらに強化することで、当社の企業価値を高め、ひいては東京や日本の発展につながっていくといった好循環を生み出したいと考えています。

※1 Scope3:事業者自らが排出している温室効果ガスであるScope1(直接排出)、Scope2(間接排出)以外のサプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出量のこと。

今後に向けて

当社グループは、これからもグループ理念「東京を走らせる力」を念頭に、お客様の安全を第一に、首都東京の都市機能を支える交通事業者として、変わらぬ重要な役割を果たしながら、鉄道を核とした都市・生活創造企業グループを目指してまいります。

そのためにも、今回策定したサステナビリティ経営ビジョンを実現していく必要があります。そこで今回、ビジョンに基づく取組をより一層推進するため、マテリアリティごとにKPIを設定するとともに、「東京メトロプラン2024」において特に重点的に取り組むものを経営目標値として公表いたしました。今後、取締役会による定期的なフォローアップのもと、目標値や指標の達成に向け、全社員一丸となって各種施策に注力し、サステナビリティ経営をより一層加速していきたいと考えています。

ESGに関する取組としては、3年続けてサステナビリティボンド (※2) を発行し、調達した資金を充当することによって、環境問題・社会課題双方の解決に資する施策を推進しようと考えています。また、TCFD賛同に紐づくシナリオ分析の深度化を図り、リスクマネジメントの強化を図ることに加え、人権問題への取組を強化することとし、人権問題への対応方針を定め、当社における人権リスクを特定したうえで、開示したいと考えています。

さらに今年度は、人的資本経営についても取組を加速したいと考えています。これまでも「WORK×LIFE SMILE ACTION」を掲げ、多様なバックボーンを持つ社員一人ひとりが活き活きと活躍することができるよう、健康経営や働き方改革に加え、仕事と子育てや介護を両立する社員、女性や障がい者、LGBTQの社員などの活躍推進に取り組んできました。今後は経営戦略と人事戦略を明確に紐づけ、社員のエンゲージメントの向上や人事制度の見直しに経営としてコミットし、自由で創意に満ちた、心理的安全性の高い企業風土を構築してまいります。

そのような風土のもと、サステナビリティ経営を推進し、「安心で、持続可能な社会」の実現に貢献するとともに、すべてのステークホルダーに選ばれる企業グループを目指してまいります。

※2 サステナビリティボンドの詳細は、当社HPをご覧ください。https://www.tokyometro.jp/corporate/ir/sustainable_finance/index.html

2022年9月
東京地下鉄株式会社

代表取締役社長 山村 明義